西武ライオンズの改革を進めた広報部長の「シン・広報戦略」、窯焼きピザにロン毛商品…数々の打ち手の裏側とは
■球場グルメや選手のセルフブランディングにも注力 戦略の一例が、西武ライオンズの本拠地・ベルーナドームにおける充実した球場グルメだ。 「グループにプリンスホテルもあり、事業ポートフォリオで飲食は重点領域の1つです。例えば『球場で窯焼きピザが食べられる』という触れ込みは話題を呼びました。生地の成形にも工夫し、窯から出したピザなど、シズル感にもこだわっています。とくに飲食は女性からの支持が厚く、新たなファン層の獲得につながった良い例です」
野球選手のセルフブランディングにも力を入れた。赤坂氏は昨年の春季キャンプ初日の全体ミーティングで、選手や球団スタッフにセルフブランディングの重要性をプレゼンしたという。 「ファンや子どもたちにとって、選手は『憧れ』の存在です。その意識を強く持って、自分自身をもっとブランド化してほしいと伝えました。選手たちに集中して聞いてもらえるよう、プレゼンの時間は3分。監督や選手の集まるミーティングに、広報部が選手から時間をもらうのは異例のことですから、調整に動いてくれた球団職員には感謝しています」
『気品あふれるローランドさんのイメージは、居酒屋でビールではなく、高級レストランでシャンパンを頼みそうでしょ?』など、スライドを使いながら、具体的にイメージしやすい話に落とし込んだ。 そのプレゼンの甲斐もあり、エースの高橋光成投手からは早速、「ロン毛をモチーフにした商品を作りたい」と相談が入った。同じくロン毛の今井達也投手と「チームロンゲ」を結成し、かぶるだけでロングヘアーになれる「チームロンゲ なりきりヘアーキャップ」が商品化された。
広報部長の就任から1年、赤坂氏は広報部員と1日がかりの「オフサイトミーティング」を行った。 「アイスブレイクでは、キャッチボールでリラックスした雰囲気の中で行いました。それまで『シン・広報戦略』の詳細は経営側だけに説明していましたが、新参者が最初から偉そうに戦略を語っても、広報部員がともに行動してくれるとは思っていなかったので、一定の信頼を得たこのタイミングで、部員にも広報戦略のロジカルな裏側をじっくり話しました。その後、部員が広報戦略の目的を理解して動いてくれることで、この1年で組織がまとまった印象です」