ハリスを大統領に選ぶべき理由。男性の危機を救えるのは、逆説的に彼女しかいない
ジェンダーの深い溝
共和党は民主党より賢明に動いてきた。特にオンラインでの男性層へのアプローチで、その差は顕著だ。その結果が如実に表れている。若い男性たちの間では保守化と政治的無関心が強まる一方、若い女性たちの間では進歩的な傾向と政治参加への意欲が高まっている。かつての「男女差(ジェンダー・ギャップ)」は、今や「男女断絶」とでも呼ぶべき深い亀裂となった。 現実を見てみよう。女性は有権者の過半数を占め、投票率も男性を上回る。そして今年は特別な年だ。連邦最高裁による中絶権保護の撤廃(ロー判決の破棄)と、それを受けた各州での中絶を問う住民投票が重なり、若い女性たちの投票参加は記録的な数に達するだろう。 ここで興味深い矛盾がある。若い男性たちの大半は、選択の権利とジェンダーの平等を支持している。しかし、彼らはこれらの問題に強く動機づけられていない。 なぜか? わたしの見立てでは、民主党の失策が大きい。彼らは若い男性たちを見捨て、ロー判決破棄が彼ら自身の機会や選択にも影響を及ぼすことを、充分に説明できていないのだ。
誰のために働くのか
民主党全国委員会のウェブサイトに興味深いページがある※2。「Who we serve(誰のために働くのか)」と題されたそのページには、16の重点支援グループが列挙されている。アフリカ系米国人、LGBTQコミュニティ、女性、退役軍人など―これらのグループは確かに重要だ。しかし、ここで注目すべき数字がある。これらのグループを合計すると、人口の約76%を占める。 一見、包括的に見える76%という数字に、実は重大な問題が隠されている。ある特定のグループを意図的に支援することは、裏を返せば、支援対象から外れた残りの24%への差別となるからだ。そして、この24%の中核を成すのが若い男性たちなのである。 データが示す現実は厳しい。過去20年間の米国で、若い男性ほど急速かつ大きく社会的地位を失った層は他にない。 この深刻な軽視は、最新の世論調査でも如実に表れている。ニューヨーク・タイムズは注目すべき分析を報じた。民主党は男性層全般で苦戦しているが、その問題は特定の層に集中している。「その弱さのほとんど、あるいはすべてが若い男性に集中している可能性が高まっている」というのだ。 さらに驚くべき事実もある。ニューヨーク・タイムズがシエナ大学と実施した世論調査によれば、ハリス氏は若い女性層で大きく支持を伸ばしている。しかし若い男性層では、前任のバイデン氏と同程度の支持しか得られていないのである。