黄鉄鉱に閉じ込められた見事な化石、4億5000万年前の未確認の種
(CNN) きらめく光を放つ太古の化石が、米ニューヨーク州で発掘された。精巧に作られたアクセサリーのようなこの生物は、4億5000万年前に生きていた未確認の種だったことが分かった。 【画像】太古の海底に生息する当該の種の想像図 当該の化石は新たに確認された節足動物のもの。現代のカブトガニやサソリ、クモの遠い親戚に当たり、エビにもやや似ている。生息していたのはオルドビス紀(4億8500万年前~4億4400万年前)の海底だ。当時の生命は、まだ海から陸上への進出を始めたばかりの段階だった。 ロマンクス・エッジコムベイと名付けられたこの節足動物が鮮やかな金色をしているのは、黄鉄鉱の中で保存されていたため。このような形で化石が形成されるのは非常に珍しい。 化石はニューヨーク州中部のローム近郊で見つかった。ここは化石が豊富に出土する地域として知られる。この化石を含む同種の標本5点を解説した論文が10月29日にカレント・バイオロジー誌に掲載された。 英エディンバラ大学の地質学部で古生物学と進化について教えるスティーブ・ブルサッテ教授は、当該の化石について「これまで目にした中で視覚的に最も見事な化石の一つ。黄金のように輝いており、美術館の展示品のようだ」と述べた。同氏は今回の研究に関与していない。 ブルサッテ氏によれば、頭部から伸びた細い感覚器官など節足動物の体の各部が詳細に確認できるのは黄鉄鉱のおかげだという。 「通常、このような繊細かつ薄い器官は、一度動物本体が死んで地中に埋まれば跡形もなくなってしまう。ところがこの事例では、黄鉄鉱がそれらを固定して石に変えた」(ブルサッテ氏) 黄鉄鉱の密度が非常に高いため、論文筆頭著者のルーク・パリー氏はCTスキャンを駆使して化石の隠れた細部を検証することが出来た。今回の発見で、節足動物が頭部から突き出た付属肢を発達させた理由に光が当たるとみられる。 現在英オックスフォード大学の准教授として純古生物学を教えるパリー氏は電子メールを通じ、このような形で化石が黄鉄鉱の中に保存されているのは極めて珍しいと指摘。過去5億年でそうした例は数えるほどしかないと述べた。 化石の種は、絶滅したメガケイラ類と呼ばれる分類群に属する。前出のロマンクス・エッジコムベイという名称は、節足動物の専門家でロンドンの自然史博物館の研究員を務めるグレッグ・エッジコーム氏にちなんだ。 他のメガケイラ類は付属肢を使って獲物を捕らえるが、論文によると目を持たないロマンクスは、付属肢によって生息していた海底堆積(たいせき)物の環境を感知していた公算が大きいという。 ロマンクスの頭部に位置する器官の配置は、現代に生きる節足動物のものと似通っている。つまりこの種が備える付属肢は、太古における昆虫の触角もしくはサソリやクモの口器に相当することになると、オックスフォード大のパリー氏は指摘した。