「漁業に女性が進出しても、海の神様は嫉妬しない」生かし切れていなかった女性の力、北欧のジェンダー先進国が示す希望
× × 男性が漁に出て、女性が水産加工や仕分けなど陸での仕事を担うのは、アイスランドでも変わらない。一方、時代とともにロボット活用などの技術がめざましく進化し、持続可能な漁業に向けた資源管理の重要性も増しています。海に出なくても、女性が陸の上で漁業のためにできることはたくさんある。技術開発やマーケティング、資源管理などさまざまな分野で女性が働ける態勢を整えることが大切です。 アイスランディックは祖父が創業した会社で、私は漁業が身近にある環境で育ちました。幼い頃は水産加工場の中を遊び場にしていた。パリとニューヨークでデザインやマネジメントを学んだ後、会社に入りました。 私たちの国でも企業トップや管理職にはまだ男性が多い。女性たちの活躍を後押しするため、約10年前、漁業に関わりのある人たちによる「女性漁業協会」が立ち上がりました。今は300人を超える会員がおり、ネットワークづくりや知識共有を進めています。会長だった2017年と2021年に報告書を出した2回の調査では、企業の女性トップが16%から24%までアップしました。
政府がジェンダー平等への取り組みを進め、多くの分野に女性リーダーのロールモデルがいることが、こうした成果の背景にあります。地方の自治体は地元を出た若者がUターンしてくれるよう、保育所や学校の整備に力を入れ、子育て環境を充実させているので、最近は漁村出身の女性が大学卒業後、古里に戻り水産業界で働くケースも増えています。 アイスランディック日本法人で働くため昨年、夫と2人の娘と共に日本に赴任しました。いくつかの水産加工場を視察したが、日本の管理職はほとんどが高齢の男性で、女性は私だけという場面も多い。人口の半数である女性を起用できないのは、大きな損失です。 これまでの手法にとらわれず、女性や若者ら多様な価値観が混ざり合う大切さ、新たな技術によるイノベーション(技術革新)が生み出す躍進の可能性に目を向けてほしい。働きやすい職場づくりや、新しい力の登用に向けた政府の支援も必要不可欠です。
(取材・執筆は兼次亜衣子、浜津貴之、金子美保が担当しました) ※漁業も含め、各都道府県の男女格差を測った「ジェンダー・ギャップ指数」 が分かるサイト【2024年版都道府県版ジェンダー・ギャップ指数】