「漁業に女性が進出しても、海の神様は嫉妬しない」生かし切れていなかった女性の力、北欧のジェンダー先進国が示す希望
気仙沼つばき会のメンバーと協議を重ねた。出た結論は「男女両方が活躍できなければ元気な街にはなれない」。つばき会は2023年からジェンダーの問題に取り組み始め、地域一体となってジェンダー格差是正に取り組む兵庫県豊岡市も視察した。 ▽「女性が漁業に強い興味を持っている」 2024年2月。気仙沼港を望む集会施設で、ジェンダーやデジタルの視点を切り口にした「みらいワークショップ」が2日間にわたり開かれた。仕掛け人はもちろん、つばき会。参加者は市議や商工会議所メンバー、地元企業の幹部など、気仙沼を牽引する中心メンバー。地元の高校生らも加わり、参加者は2日間で計80人ほどに上った。 初日、斉藤さんはこう挨拶した。 「街をどうしたらいいか、自分はどうなりたいのか、真剣に話し合いましょう」 少子高齢化がピークを迎える2040年を見据えた町づくりについて、思い思いの意見が飛び交った。 ワークショップの1日目は、若者らが議論。「性別にかかわらず、誰もが可能性を開花させて生き方を選べるように」という講師の話を聞き、出た意見の一つが、漁業で「女性もリーダーになること」だ。
父が漁師の佐藤瑞記さん(20)はこう話した。 「女性の力でも漁がしやすいシステムがつくられたら、気仙沼の幅が広がるのでは」 2日目は、前日の議論で出た意見を元に、大人たちのワークショップを開催し、街の未来像を描いた。 「水産テック(技術)の学校をつくる」 「ロボットアームで養殖場のカキを誰でも引き上げられるようにする」 女性を含め、新規参入の若者や移住者といったさまざまな人が関われることを狙いにしたアイデアが、次々に上がった。 菅原茂市長も参加し、気付きを得た。 「女性が漁業に強い興味を持っているというのは一つの発見だった。男性の漁業関係者にも励みになるはずだ」 ワークショップを終えた斉藤さんは「若い人たちが描くような未来を後押ししなければと、強く感じた。この2日間が『新しい気仙沼のスタートの日だった』と、将来思えるように」と語る。 「男だから、女だからというのは、おんちゃん、おばちゃんの固定観念だよね。男のリーダーも女のリーダーもいる―そんな海の街を、若い子たちと一緒につくっていきたい」