高校にも広がるデータサイエンス教育!その最前線を紹介
学校を知ったきっかけは保護者
聖徳学園高校の10月の説明会では、「データサイエンスコース」1期生が入学後から今までの成果を発表しました。発表テーマも課題に対するアプローチもデータの使い方もさまざまです。旭丘高校でもそうでしたが「やらされている感」がまったく感じられず、自ら設定したテーマに能動的に取り組んでいる姿が印象的でした。 聖徳学園高校の生徒さんたちに話を聞くと、「答えがないのがすごくよい」「自分で答えを探せて楽しい」「やってみよう、あたってみようという気持ちになった」「中学までは、失敗しちゃいけないという先入観が強くあった。でも、今までできなかったことがこれだけできるようになったと、半年で気づいた」といった返答があり、同コースで意欲的に学んでいることがうかがえました。 聞けば1期生の全員とも、同コースを知ったきっかけは保護者からだったそうです。まだ、中学生が自らデータサイエンスに興味を抱いて学校選びをしているわけではないとも感じました。 1期生のある保護者に聞くと「自信やポジティブシンキングを身につけさせたかった」から勧めてみたとのことです。その保護者の子どもは、「中学校のテストでは、〇✕で自分が失敗したところばかり気にしていたが、できるようになったことにも気づけて、失敗したところも、こうしたらもっとうまくいきそうと思えるようになった。次の課題も見えてきて、成長につながっていると思う」と話していました。
データサイエンスを学ぶ上で大切なこと
先に述べた通り、2022年4月、高校の情報科目が大幅に刷新され、「情報1」が必履修になりました。今後すべての高校生がプログラミングやデータ活用を学ぶようになり、IT、情報処理が国民的素養になる時代が訪れます。早期からデジタル時代の「読み書きそろばん」を身につけさせ、伸ばしていく動きが加速しそうです。 まだ公式に発表されていないため学校名は伏せますが、これまで一般的には文系の学校というイメージだった高校でも、すでにデータサイエンス学科やコース設定に動き出しています。学校独自設定の科目としてデータサイエンスの設置を構想している学校は、枚挙にいとまがありません。 そして、今回紹介した旭丘高校、聖徳学園高校のように、「データサイエンス」と名の付く学科・コースでも、学び方がまったく異なる学校はもっと出てくるでしょう。ですから、受験生・保護者にとっては、学校の教育目標や教育内容・カリキュラムをよく調べ、自分に合った学校を選ぶ力が今まで以上に必要になってくるでしょう。 中学校でも探究学習に力を入れている学校ほど、その活動においてデータサイエンスの基礎知識やスキルが必要になってきます。コースや学科を名乗らなくても、「総合的な学習の時間」「技術・家庭」「学校設定科目」でデータサイエンスを扱っている学校もあります。 保護者が高校生・大学生だったころと時代は変わりました。今やデータサイエンスを学ぶ上で、数学の知識・技能は欠かせません。これからの時代は文系・理系を問わず、(中学までの義務教育段階の算数・数学はもちろんのこと)高校での数学の学習はしっかりやっておいたほうがよいでしょう。 大学入試は全体的には易化し、科目数を減らすなどの軽量化が進み、選抜機能を失ったような年内入試を実施する大学も少なくありません。「数学」を勉強しなくても入学できる大学は、減ることはないでしょう。 しかし、学びのゴールを「大学に入学すること」ではなく、「大学入学後に成長して、未来を生き抜く力を身につけること」とするならば、高校での数学はしっかりと学び、大学入学後も「数理・データサイエンス」のプログラムや授業を積極的に履修して自分のモノにしていくことが、VUCAの時代に生き残るために必要なことのように思います。目の前の数学から一刻も早く逃れたいと思う気持ちが強い高校生は、データサイエンスの素養を思うように伸ばせず、AIや他人の指示に従うだけの生活が訪れるかもしれません。 ※VUCAの時代:不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)な環境が広がり、変化が速く予測困難な現代を表す概念。
寺田拓司