高校にも広がるデータサイエンス教育!その最前線を紹介
2024年度、私立高校で「データサイエンスコース」が誕生
次に、首都圏の私立高校で最初に「データサイエンスコース」を設置した聖徳学園高校(2024年4月~)を見てみましょう。同校の「データサイエンスコース」は文部科学省が認定する教育課程特例校の一つで、普通科です。「文理融合・探究型プログラム」と「国際バカロレア(IB)型英語イマージョン教育*¹」に特色があります。 リベラルアーツを重視する国際バカロレア(IB)教育の手法を応用して、一部教科を英語イマージョン(データサイエンス探究も含む)で行っています。実際、英語を母国語としない生徒を対象とした「国際バカロレア(IB)資格対応教科書」を使って授業が行われていました。IBの教科書で扱う関数電卓を、聖徳学園高校でも使用しています。 データサイエンス(数学・統計学・情報学)やリベラルアーツ(分理融合・企業や大学との連携)、グローバル(多様性・言語活動)により、プログラミング、データエンジニアリング、AI、教科横断学習、学校外実習、海外研修、イマージョン教育、英語力向上を通して、新たな価値を生み出す力をつけていくのが狙いとのこと。 Python、Wolframなどのプログラミング言語や、統計解析ソフトSPSSを使った授業もありますが、文理融合の探究型プログラムが中心です。数値・文字だけではなく、画像・音声といったデータも使って、「見えないものを見えるようにしていく」ことで学びを深めようとしています。聖徳学園高校では、データサイエンスはこれからの人たちに必要な「素養」だと位置づけており、高校生の段階から身につけ、高めていくことを狙いにしているのです。 経験上、生徒はつまらなくなってくると、公式だけ覚える、解くだけ、点数を取るだけになりがちです。しかし、探究型の学習になると、生徒の様子は変わってきます。「単に知識や公式を覚えるのではなく、それは何に利用できるのかを理解しながら学んでいく。教科横断的に学習することで、なぜそのデータが必要なのか、何に使えるのか、どういう時にどんなデータを使うのかに気づき、探究学習の中だと自然に身につくようになる」と、国際バカロレア教員でもあるデータサイエンス部長のドゥラゴ英理花先生は言います。 「PPDACサイクル~統計的課題解決サイクル」での学びは「歴史総合」の授業でも行われ、このような歴史になったのはどうしてなのか、データから根拠を見つけてみようといったアプローチがなされます。 ドゥラゴ先生曰く「統計・数列(数学B)・組み合わせ(数学A)・確率(数学A・B)もデータサイエンスと併せて勉強するほうがわかりやすい」とのこと。それも一理あるのですが、日本の学習指導要領ではこれらの単元は別々に学び、入試でも違う科目になります。ですから、校長の伊藤正徳先生は「(データサイエンスコースの生徒は)一般選抜での大学進学を想定していない」と言います。総合型選抜での進学や、海外大学への進学*²を想定しているということです。 この学校の同コース一般入学試験は、1型「探究型データリテラシー試験」、2型「新思考力試験」です。1型は、読解リテラシー、数学・科学的リテラシーを問う筆記試験+面接+書類審査(調査書・活動報告書)、2型は、SDGs関連の動画を視聴し、動画に対する課題・解決方法を設定してシートにまとめ、受験生同士で各自のシートを共有し、ディスカッションの結果をまとめ、プレゼンテーション資料を作成して発表+面接+書類審査(調査書・活動報告書)となっており、いわゆる学科試験はありません。旭丘高校とはまったく異なります。 1型・2型とも出願要件が、英検準2級相当の資格となっている点が大きな特色です。入学試験全体が、入学後の授業の予告編のような内容になっていると感じました。 *¹:聖徳学園高校は国際バカロレアの認定校ではないので、国際バカロレア修了資格を得ることはできません。イマージョン教育とは、外国語をあくまで手段として、言語以外の教科を学ぶ外国語学習方法のことです。 *²:同校の「ダブルディプロマプログラム」を受講すると、同校とアメリカのロードアイランド州にあるプロビデンス・カントリー・デイスクール(PCD)の両校の卒業資格を得られ、取得後は全米でPCDが提携を結ぶ大学への推薦入学制度を利用できます。海外協定大学推薦制度(UPAA)に加盟しているほか、海外大学への指定校推薦枠もあります。