高校にも広がるデータサイエンス教育!その最前線を紹介
データサイエンスを学ぶ上で「情報」と「数学」は必須
高校の学習指導要領では、「情報1」は大きく分けて4つの項目で構成されています。データサイエンスは「(4)情報通信ネットワークとデータの活用」の中でデータベースを扱い、データを収集・整理・分析する方法を学びます。 「情報2」は大きく分けて5つの項目から構成されていて、データサイエンスに関しては「(3)情報とデータサイエンス」で学びます。「情報1」ではデータサイエンスに簡単なプログラミングを活用するのにとどまりますが、「情報2」では高度なプログラミング等まで行い、データサイエンスの学びを深めます。 新教科「情報」でのデータサイエンスは、「数学」のデータの分析の分野と内容の重複が見られます。「情報1」と「数学1」、「情報2」と「数学B」では一部の学習内容に重複があり、同じ内容を異なるアプローチで学習して、連携したり相互に補完的したりしている部分も見受けられます。 例えば「数学1」では相関係数や散布図を、数学的なアプローチにより計算させることに重点を置いていますが、「情報1」ではその読み取り方や解釈を重視して学びます。こうして見ていくと、「総合的な探究」「情報」「数学」の各科の知識や技能を関連させながら学んでいくのだということがおわかりいただけると思います。
2022年度に公立高校で「数理・データサイエンス学科」が誕生
札幌市立旭丘高校に「数理データサイエンス学科*」が開設されたのは、現行の学習指導要領での学びが新高校入学生から段階的に始まった2022年4月のことです。おそらく、高校では日本初となるデータサイエンスの学科です。 *理数と情報に関するその他専門学科であり、普通科ではありません。 翌2023年度にはSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されました。SSHでは、高校等で先進的な理数教育を実施するとともに、高大接続の在り方について大学との共同研究や、国際性を育むための取り組みを推進します。また創造性、独創性を高める指導方法、教材の開発等の取り組みを実施します。 このため、旭丘高校には高校における数理データサイエンス教育のモデル授業を開発・実践するミッションがあると考えられます。もちろんSSHとして、探究活動に必要な設備の充実や、研究開発機関や第一線の研究者との交流機会、全国的な成果発表の場などを同校は得ています。 「数理データサイエンス学科」の1年生は、数学1・2・3・A・B・Cを横断的に学ぶ「理数数学」、統計の知識や技能を課題分析や課題考察に応用する「SS統計学」、「理数物理」「理数化学」「理数生物」の3科目を同時に学ぶなど、意欲的な教育課程になっています。 データサイエンスでは、1年生はオープンデータを活用して情報収集・分析・考察・発表する「SDS基礎」において、「クマの出没場所と天候」などをテーマに扱いました。2年生では本格的な「SDS探究」として、北海道のゴキブリの研究やIoT雪質観測機の製作など、北海道ならではの探究活動を行いました。この2つの探究について、2024年9月に実施された同校での学校説明会で生徒から発表がありました。 また、学校独自の「サイエンスアカデミー」という、データサイエンス・AI・ITを活用した先端分野に触れ、諸課題に関する現場体験も用意されています。2024年度に実施された「サイエンスアカデミー」では、プロ野球チーム・日本ハムファイターズのエスコンフィールドに足を運び、プロ野球のデータアナリストにデータの分析・活用法を学ぶ活動も行っています。 旭丘高校のコース責任者である坂庭康仁先生は、「科学技術者を志す人材、先端IT人材、次世代リーダーを育てたい。だから数学や理科が大好きで科学者・研究者になりたい生徒や、AI・IT・プログラミングに興味があるような生徒に入学してほしい」と話します。同校の「数理データサイエンス学科」の2025年度一般入学試験の配点は、数学と理科は得点を2倍、英語を1.5倍に換算しており、理科や数学に強い生徒を集めようとしている意図が明確に感じられます。 この学科の第一期生が2024年度の高校3年生であるため、まだ大学合格実績は出ていませんが、学年の80人中27人が探究成果を活かして、学校推薦型・総合型選抜に挑戦予定であると学校説明会で紹介されました。個人的な印象ですが、将来、多数のデータサイエンティストを輩出するような高校になるのではないかと感じています。