「シートベルトがはまらない」調べて見つかったものは…「故障かな?」と思ったらトヨタの整備士がまずやること
■「シートベルトがはまらない」調べてみたら… 「すると、ステアリングを回しても、タイヤの方向が変わらない。大変なことです。当時、100万台のリコールになりました。原因はすぐに特定できたので、鉄の材質を強化して、さらに、軸のかみ合わせを深くして、力の伝達がうまくいくように直しました。人間の体で言えば関節部分を強くしたようなものです。この時も、開発していた時は何の問題もなかったのですが、実際に市場に出してみると、故障が出てくることがあるんです」 松本はステアリングの故障が忘れられない。では、杉田が覚えているのは何だろうか。 「私はシートベルトをはめるバックルの故障が忘れられません。お客さまからどうしてもシートベルトがはめられないと販売店に故障連絡が来ました。販売店でいくら調べてもわからない。そこで車が持ち込まれたので、X線装置でバックルの内部を観察したのです。そうしたら、なかに百円玉が入り込んでいました。シートベルトを差し込むことができないはずです。 百円玉を発見することはできるでしょう。しかし、もし、違うところが壊れていた場合、分解してしまったら、真の原因がわからなくなってしまう。 ですから、まずは『非分解』で状況を確認します。その時は百円玉を発見した後、バックルを分解して取り出しました。私たちはただ、直すだけでなく、必ず原因を追究します。同じ車種に不具合が生まれるかもしれないので、徹底的に追究します」 ■世界中のサービスマンが集まる場所 現在、松本と杉田が在籍しているサービス部は不具合を直したり改良したりする方法を全国のトヨタ系サービス工場に広める。加えて、「正確かつ親切なアフターサービス体制の構築」を推進する部署だ。多治見サービスセンターでは、日本だけでなく世界各地の販売店からサービスマンたちが研修にやってくる。 多治見サービスセンターにいると、さまざまな色彩のツナギ服を着た人たちと出会う。それぞれの販売店のサービス工場のユニフォームを着た人たちだ。いずれの人たちも各販売店ごとに特徴のあるユニフォームを着ている。これほど多彩な色のツナギを着た人たちに出会う場所は他にない。なんといっても世界中からサービスマンが来ている。研修を受け、優秀な成績を収めたサービスマンの名前はエントランスの横に貼り出してある。 サービスマンたちが学び、技量を上げていく聖地が多治見サービスセンターだ。 松本は多治見に常駐している。杉田は同じセクションだけれど、勤務地は東京の芝浦にある事務所である。松本は中部サービス分室で、杉田は南関東サービス分室。全国12カ所にサービス部の分室がある。販売店のサービス工場は多治見だけでなく、自分たちの店舗からもっとも近い分室に相談を持ち込むのである。