会社では「部長より出社が遅いのは失礼だから」と、部署のメンバーは1時間前に仕事を始めています。始業前でも「残業代」を請求できますか? 別に間に合えばいいと思ってしまいます…
部署の上司や先輩が始業の1時間も前に出社し、仕事を始めている……配属先がそんな環境だったら、みなさんはどうしますか? 周囲と同じように早朝出勤をするよう求められれば、断りづらいという人も少なくないでしょう。 しかし早めの出勤は受け入れるとしても、多くの人が気になるのが「給料は出るのかどうか」です。始業1時間前ほど極端でなかったとしても、始業時間にスムーズに仕事がスタートできるようにと、早めの出勤を促す会社もあります。 本記事では始業時間前に出勤して働くことが残業時間に該当するケースと、該当しないケースについて解説します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
70%以上の人が始業時間の15分以上前に出勤している
本事例のように、本来の始業時間より前に出勤することが暗黙の了解になっている会社や部署は存在します。中には「部長が始業1時間前に出勤しているから、一般社員のあなたはもっと早く出勤しなさい」と上司から指導を受けたことがあるという人もいるかもしれません。 また、昔から「始業時間にはすぐに仕事が始められるようにするべき」という価値観があり、早めに出勤して業務の準備をする人も少なくないはずです。働き方改革で残業に対する規制が厳しくなったことにより、自主的に早く出勤し仕事の遅れをカバーしている人もいるでしょう。 メディア事業などを行うベースメントアップス株式会社が2019年に実施した「仕事に関する意識調査」によると、出社時間は「始業の15分前」が35%と最も高く、「30分前」が27%、「1時間前」と答えた人も11%おり、全体の7割を超える人が始業時間より早く出勤していることがわかりました。一方で「始業時間ちょうど」という回答は27%にとどまっています。
始業前に仕事を始めると時間外労働にあたる可能性がある
それでは早めに出社して仕事をする場合、給料は支払われるのでしょうか。結論からいうと、始業時間前の労働に対しては、残業代が発生するケースと発生しないケースがあります。 そもそも労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり、「使用者の明示または黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間」のことをいいます。また業務外であっても、例えば出席必須の親睦会など参加が事実上強制されている場合も労働時間に含まれます。 なお「黙示の指示」とは、具体的な業務命令がなくても、労働者が仕事をしなければならない状況に置かれている、労働者がそのような環境にあることを管理者が黙認しているといった状態をいいます。