就学時健康診断は、子どもの予防接種歴を確認するチャンス。受けもれているワクチンありませんか?【小児科医】
日本脳炎にかかってしまった人の多くが重症化
日本脳炎は1960年代までは毎年数千人の発症者がいましたが、環境改善や、ワクチン接種がいきわたり、今や年間10人に満たない人数に減っています。 もう日本脳炎のウイルスがいなくなったのならいいのですが、実はそうではありません。発症者は少なくても、かかってしまった人の多くが重症で死亡者も出ています。感染には、ウイルス宿主の豚と蚊が関係しています。ウイルスを体内に持つ豚の検査では高率に感染例が見つかる地域があり、日本中でパラパラと患者が出ています。ウイルスを持つ豚を蚊(コガタアカイエカ)が刺して、その蚊が人を刺してうつし、発症した場合は命をかけた戦いを強いられているのです。 日本脳炎発症者が出たときには、その周囲にいた約1000人が体内にウイルスを持っていると言われています。発症しないためにはワクチン接種が必須です。一般的には、3歳から始めればと言われているワクチンですが、実は生後6カ月を過ぎれば定期接種ができます。 日本脳炎ワクチンはとても有効性が高いので接種さえしていれば発症しないで済みますが、 「ワクチンさえ接種していればねえ」とならないためには、定期接種対象の7歳半までに3回の接種が済ますことが肝要です。 以前から患者が多い西日本、養豚が盛んな地域(九州、首都圏、北海道など)、近年患者が発生していている地域(熊本、千葉、茨城、広島、静岡、岐阜など)では、低年齢で接種を済ませておくとより安心です。そして、近年は人の移動も頻繁に行われるようになっているので、どの地域の子どもでもワクチン接種を済ませることが大事。2023年に発症者が出た静岡県では、低年齢での発症者が出ないように、3歳未満での積極的接種をすすめることになったそうです。 構成/たまひよONLINE編集部 就学時健診を受けるときには、ぜひ今までの予防接種歴を振り返ってみましょう。太田先生は「とくに、定期接種年齢対象のMR、かかると重症になる日本脳炎が未接種ならこの機会に接種を済ませて入学式を迎えましょう」と話します。 ●記事の内容は2024年11月の情報であり、現在と異なる場合があります。 監修者 【小児科医】太田文夫 先生 PROFILE:おおた小児科・院長ワクチンで防げる感染症から子どもを守りたい小児科医。NPO法人VPDを知って、子どもを守ろうの会副理事長。B級グルメめぐりが趣味。広島生まれのカープファン。先生が着ている赤いTシャツには、「ワクチンうって麻疹・風疹撲滅」と書いてあります!
たまひよ ONLINE編集部