トランプ大統領で揺れ動いた2017年 国際ニュースを振り返る
2017年も世界が大きく動いた一年でした。不安定な情勢によって各国は、慎重であると同時に大胆なかじ取りを求められているといえます。2018年以降を展望する手がかりとして、2017年の重大ニュースを振り返ります。(国際政治学者・六辻彰二) 【写真】世界で「予想」が覆された2016年 重大ニュースで振り返る
【1】トランプ大統領の内政・外交
2016年の米国大統領選挙で当選したトランプ氏が大統領として相次いで打ち出した政策によって、米国内外の情勢は予想以上に大きく揺れ動きました。 政権発足直後の1月に出された、中東7か国から移民の入国を制限する政令は、その対象となった諸国からの不満を呼んだだけでなく、国内からもIT系企業を中心に「移民制限はイノベーションを妨げる」と反対の声が上がり、裁判所からも違憲判決を受けることになったのです。 国内の分裂が深まるのと並行して、閣僚の辞任・解任も続出。とりわけ、2016年大統領選挙にロシアが介入した疑惑をめぐってフリン大統領補佐官が2月に辞任し、一方でこの「ロシアゲート疑惑」を追及していたコーミーFBI長官が5月に解任されたことは、米国政治の不安定化を印象づけました。フリン氏が12月に「選挙以前にトランプ氏の指示でロシア政府関係者と接触したこと」を認めたため、この問題は今後も米国の内政に大きく影を落とすものとみられます。 国内での失点を回復するかのように、トランプ政権は「米国第一」を掲げ、「米国の国益にそぐわない」とみなす海外との取り決めを一方的に破棄してきました。その中には1月の環太平洋経済連携協定(TPP)離脱、地球温暖化防止に関するパリ協定脱退(6月)などが含まれます。この他、国連の平和維持活動(PKO)への資金協力の減額を主張(6月)するなど、国際的な協力に対する消極的な姿勢も顕著です。 その一方的な外交・安全保障政策は、対立の火種ともなってきました。4月には「化学兵器使用」を理由にシリア軍をミサイルで攻撃し、これに続いて、過去の北朝鮮政策を「失敗だった」と総括したことを受け、空母カール・ビンソンを朝鮮半島近海に派遣して、北朝鮮に「大量破壊兵器の破棄」を強く要求。12月にはエルサレムをイスラエルの首都と認定しました。これらは結果的に地域や世界の緊張を高めており、トランプ政権は来年も世界を揺らす震源地となるとみられます。