トランプ大統領で揺れ動いた2017年 国際ニュースを振り返る
【4】サウジアラビアとカタールの断交
6月5日、サウジアラビアはカタールとの断交を発表。サウジ政府はこの理由として、カタールがイランと通じていることや、アルカイダやIS、パレスチナのハマスを支援していることを挙げました。これに合わせて、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンなどもカタールとの外交関係を断絶しています。 2015年に即位したムハンマド皇太子のもと、サウジアラビア政府は産業の近代化などに取り組み、経済改革に抵抗する王族の取り締まりを強化する一方、外交的な「足場」であるスンニ派諸国への締め付けを強化しています。豊富な資源に基づく経済力を背景に、外交的な独立を目指してきたカタールとの断交はその象徴であり、サウジの強硬姿勢はかえって地域の不安定要因になっているといえます。
【5】カタルーニャでの分離独立運動
10月1日、スペインのカタルーニャ州で分離独立の是非を問う住民投票が行われました。スペイン政府の反対のもと、分離独立派が強引に行ったこの住民投票で、独立賛成票は全体の約90パーセントに上りました。 これを受けて、独立反対派やスペイン政府の分離独立反対キャンペーンも活発化。これに対して、スペイン政府は独立を主導したカタルーニャ州政府のプチデモン首相を10月28日に解任し、直接統治に切り替えました。さらにプチデモン氏は「反逆罪」の嫌疑を受けてベルギーに事実上の亡命を余儀なくされたのです。 もともと独自の文化をもつだけでなく、スペイン全体の経済がやや低迷する一方、工業都市バルセロナを抱えるカタルーニャの経済が好調であることは、「自分たちの富が吸い上げられている」という不満を増幅させやすい環境となりました。カタルーニャの分離独立の動きは、「他者による支配」の拒絶の高まりを象徴するものといえます。
【6】中国共産党の権力集中の加速
10月18日、5年に1度の中国共産党大会が開幕。その最終日の24日、共産党大会は「習思想」を党規約に盛り込むことを決定。中国共産党において特定の指導者の考え方を方針として採択することは毛沢東以来のもので、これは習主席の権威を一層強化するものです。 さらに、その翌25日には共産党の最高指導部である中央委員会の7名の委員が発表され、再選された習主席と李首相の他、これまで習主席を支えてきた側近で固める陣容が明らかになりました。 これらは、習主席を中心とする体制をこれまで以上に強化する方針を示します。「一帯一路」構想を掲げる中国は、強力な指導部の発足を内外に知らしめることで、国際的により大きな役割を果たす意思を示したといえるでしょう。