トランプ大統領で揺れ動いた2017年 国際ニュースを振り返る
【7】ロヒンギャ難民の大量国外流出
10月23日、スイスのジュネーブでロヒンギャ問題を話し合う国際会議が開催されました。ミャンマーでは2012年以降、イスラム教徒のロヒンギャに対する襲撃や殺害などが激化。その中心にはミャンマー軍や過激派仏教僧がおり、2017年末までに約65万人のロヒンギャが国外に避難したとみられます。 これに対して、欧米諸国やイスラム諸国から批判が高まった一方、ミャンマー政府と関係の深い中国がこれを擁護。そのため、制裁決議などを行う国連安保理ではなく、より率直な意見交換が行える場としてジュネーブでの支援国会議は開かれました。 高まる批判を背景にミャンマー政府は11月23日、ロヒンギャ難民の多くが逃れているバングラデシュ政府との間で難民帰還を合意。しかし、帰還後に再び迫害される懸念もあり、帰還事業はほとんど進んでいません。各国の力関係のもと、ロヒンギャの人々の苦難は、今後も続くとみられます。
【8】ドイツ連邦議会選挙で与党が議席減
9月24日、ドイツ連邦議会選挙が行われました。その結果、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU)は709議席中246議席を獲得して第1党の座を守ったものの、65議席を減らし、入れ違いに2013年に発足したばかりの極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が94議席を獲得して躍進しました。 ギリシャ債務危機やシリア難民の受け入れなどで、ドイツは常にEUを支え続けてきました。しかし、今回の選挙結果は、ドイツ国内で排外主義的な気運が高まる様相を示したといえます。 少数与党という不安定を避けるため、メルケル首相は第二党となった社会民主党との大連立交渉に臨みましたが、交渉は決裂。与党内で「再選挙」を求める声さえ上がるなか、12月20日に両党は交渉を再開し、1月12日までに結論を見出すことで一致。EUを支え続けたドイツの混乱は、今後のヨーロッパ全体にも大きく影響するものとみられます。
----------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo!ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト個人ウェブサイト