日産、米国で従業員の6%が早期退職に応募 販売不振で在庫水準がトヨタの3倍超に
日産自動車は、収益が悪化した米国事業の早期退職の募集に、現地法人の従業員の約6%が応募したことを明らかにした。日産全体で9千人を計画する人員削減の一環で、900人程度が年末をめどに退職する見通し。ただ売れ行きの鈍さから、米国の新車在庫は業界平均の約1・3倍、トヨタ自動車の3倍超と高水準だ。人員削減で固定費を削っても、販売不振の元凶を断たなければ競争力回復は見通せない。 【ランキング】自動車の世界販売トップ10(2024年上半期) 日産は11月7日公表した2024年9月中間連結決算で、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比90・2%減の329億円と落ち込み、営業利益率が前年同期の5・6%から0・5%まで悪化。純利益も前年同期比93・5%減の192億円の低水準で、トヨタやホンダが堅調な収益を確保している北米事業は営業赤字に転落した。 米調査会社のコックス・オートモーティブによると、日産の10月時点の米国での新車の在庫日数は109日で、業界平均の85日を上回る。ハイブリッド車(HV)が好調なトヨタは35日、ホンダは59日だ。売れずに在庫が積み上がり、実質値引きする販売奨励金(インセンティブ)が増えて利益を圧迫し、安売りがブランド価値を下げる悪循環に陥っている。 ■経営力が低下している恐れ 米国で人気が高まっているHVやプラグインハイブリッド車(PHV)を投入できていない商品構成の課題が指摘されているが、問題はそこだけではない。ガソリン車が中心でも、SUBARUや三菱自動車の在庫日数はそれぞれ66日と85日と、業界平均以下に収まっている。日産は、市場の変化を迅速に把握して適応する経営力が低下している恐れがある。 これに対し12月には新設の「チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)」が販売と収益を管理する経営体制に変更する。CPO職は意思決定を迅速化する経営体制の見直しの一歩との位置づけだが、人事の狙いが不明瞭だ。 北米事業を統括するルノー出身のジェレミー・パパン氏は現在、内田誠社長に経営報告しているが、12月からは報告先がCPOに変わり、内田氏はCPOから報告を受ける。パパン氏の統括権限が変わらないとすれば、「屋上屋」となる様相で、内田氏と現場の距離は遠くなってしまう。 内田氏は来年1月と4月の経営体制変更を予告しており、そこで地域統括を含め、抜本的な役員らのスリム化を図る可能性はある。