日産、米国で従業員の6%が早期退職に応募 販売不振で在庫水準がトヨタの3倍超に
だが、CPOに就くフランス日産出身のギョーム・カルティエ氏は、担当している欧州事業がやはりインセンティブの増加などで営業赤字に陥っており、北米の立て直しに手腕を発揮できるのか、懸念される。
米大手格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは、今回の業績悪化に対して日産の信用格付けを維持した。現在の格付け「BBプラス」は既に投機的水準で、一定の業績変動リスクを織り込んでいるうえ、自動車部門の現預金が1兆3千億円に上るなど財務基盤の健全性は保たれているためだ。流動性・資金調達に支障が生じるレベル感の「危機はないとみている」(美澄祐太アソシエイトディレクター)という。
■「物言う株主」が大株主に
もっとも、同程度の格付けの仏ルノーや米フォード・モーターと比べても「非常に収益性が低い。中長期的に電動化や自動化に向けた投資をしっかりしていくことがなかなか現時点では難しくなっている」(同)と評価は厳しい。今後6カ月程度で業績改善の兆しがみられない場合、信用力の下方圧力が強まるとしており、生産調整による在庫圧縮や固定費の削減などによる赤字体質からの早期脱却が求められている。
日産の大株主には今月、「物言う株主(アクティビスト)」とされる旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの関連ファンドが新たに名を連ねており、株主からの業績改善圧力が強まる可能性もある。
しかし、合理化だけでは日産の復活は望めない。
中間期の業績悪化を受けて内田氏が示した生産能力20%削減、固定費3千億円削減の合理化は、新型コロナウイルス禍の20年に打ち出した構造改革「日産ネクスト」と全く同じだ。
4年前の改革策の説明には「過度な販売台数の拡大を狙わず、収益を確保した着実な成長を果たす」「車種を競争力のあるラインアップに切り替える」とある。改革はほぼ達成したはずだったが、内田氏は決算会見で、足元の販売計画は過度な台数だったとし、改革で目指した企業体質との乖離(かいり)を認めた。
経営陣が、4年前の課題に再び向き合うことになったのはなぜか。取引先や従業員、顧客の声を吸い上げ、その真因を突き止めて解決しなければ、合理化で短期的に業績が好転しても縮小均衡を繰り返すことになりかねない。(池田昇)