クマの市街地〝居座り〟相次ぐ 環境保全進み頭数増加、捕獲には「箱わなが最適」と専門家
秋田市のスーパー「いとく土崎みなと店」にクマが入り込み、2日に捕獲された騒動では、肉売り場付近が荒らされていた。専門家は、冬眠前のクマが餌を求めて立ち入った可能性を指摘する。 【写真】駆除されたクマを載せ、スーパーを出る軽トラック ■「冬眠場所探し」か 野生動物の生態などに詳しいNPO法人「生物行動進化研究センター」理事長のパンク町田さんは、「11月後半から12月にかけてはクマが冬眠に入る時期。体に脂肪をつけるため、餌を求めて店に立ち入った可能性もある」と推測する。 近年、年末にかけて市街地でのクマの〝居座り〟が相次いでいる。町田さんは、今回のクマについて「いきなり人間の住む地域に出てきたとは考えづらい。何日も前から周辺をうろついて、侵入した際に初めて発見されたのではないか」と、冬眠場所を探していた可能性も示唆する。 秋田県では、11月28日にも横手市で高齢者福祉施設の車庫に前日から入り込んでいたクマ1頭が駆除された。昨年12月には、北海道芦別市の材木店の敷地内にもクマが立ち入っている。町田さんは「冬眠は必ずしも穴である必要はなく、木のまたやくぼみでも可能だ」と話す。 ■環境保全でクマ増加 町田さんによると、近年は環境保全が進められてきたことで小動物が増え、それらを餌とするクマの個体数は増加。ただクマは小動物のほかに木の実なども食べるが、そうした植物性の餌が不足し「食べ物を求めて人里に出没するようになった」とみられるという。 それに伴い、クマによる被害は多発している。環境省によると、令和5年度のヒグマやツキノワグマによる人身被害の数は19道府県の219人。最多だった2年度の158人を大幅に上回っている。捕殺数もヒグマ約1400頭、ツキノワグマ約7600頭と、統計が残る中で過去最多となっている。 ■麻酔銃は「殺してしまう可能性」 今回の秋田市のスーパーでは、クマを捕獲するのに、檻などの中にパンやはちみつといった餌を入れ、おびき寄せる「箱わな」が用いられた。 町田さんは「麻酔銃は、大量に麻酔を投与すれば殺してしまう可能性がある上、眠らせるまでに20~30分かかりその間に興奮状態にさせてしまいかねないためリスクが大きい。クマの身体に悪影響がなく、人間に危険を及ぼすことなく捕獲できる箱わなが最適だ」としている。(堀川玲)