「今のままでいい」という人に動いてもらうには? シャープ亀山工場初の女性管理職が考える「リーダーの役割」
目の前のメンバーの未来を見る
とはいえ、なかには「今さら新しいことをするのは億劫(おっくう)だ」「別に今のままでいい」と考えている人もいます。正直、手ごわいです。 そこで、「今のまま、平穏無事に1日が終わればそれでいいです」というメンバーに、「平穏無事に1日が終わると、どんないいことがあるの?」というように、「その先」を聞いてみました。 すると、「ストレスがないから、家族と穏やかに過ごせる」「仕事以外の生活も大事にしたい」など、その人の「こうなりたい」「こうありたい」が見えてきます。 そうした価値観、考え方を理解したうえで、「じゃあ平穏無事に1日が終わるためには、何が必要?」と問いかけていくと、「帰り間際にトラブルが発生しないようにしたい」と、何かしらの答えが出てきます。 そこからさらに、「帰り間際にトラブルが発生しないためには、何が必要か?」「そのために、今できることがあるとしたら?」と掘り下げていきます。そうした問答の中で、その人にできそうなこと、やってもらいたいことを見つけるようにしました。 「じゃあ、それは私がやります!」というような「ノリノリ」な感じはありませんが、「やれば自分にもメリットがある」ということは理解してもらえました。 改善業務は、チームにとって仕事がしやすくなったり、安全性が高くなったり、効率がよくなったりというメリットをもたらします。 成果が出たら、「これはAさんが取り組んで、改善してくれたんですよ」というように、チーム全員に共有しましょう。仕事の一環とはいえ、メンバーから「ありがとう」と言われることは、本人にとっては嬉しいものです。そういう場をプロデュースできるリーダーという役割を、ぜひ楽しんでください。 深谷百合子(ふかや ゆりこ) 研修講師/合同会社グーウェン代表。大阪大学卒業後、ソニーグループ、シャープで工場の環境保全業務を行う。2006年、シャープ亀山工場初の女性管理職となり、約40名の男性部下を抱えるが、仕事を任せられず、リーダーシップとは何かに悩む。失敗して萎縮する部下のフォローをする中で、自分らしいリーダーのあり方を見出す。2013年から部長職として中国国有企業との新工場建設プロジェクトに参画。その後、中国国有企業へ転職。動力運行部の技術部長として約100名の中国人部下を育成する。現在は、職場コミュニケーションの改善を主なテーマに、講演や研修を行っている。著書に『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)がある。 協力:日本実業出版社 日本実業出版社 Book Bang編集部 新潮社
新潮社