太陽系外惑星が次々と発見されているのはなぜ? 地球に似た星はあるの?
惑星の環境をもっと詳しく
大気の有無やその組成も、トランジット法で確認することができます。太陽の手前を地球が横切っているイメージ図を、もう一度ご覧ください。地球の縁が赤くなっています。これは、地球の大気を通過してきた太陽の光です。ちょうど、地球の夕焼け空を遠くから見ていると思うと、分かりやすいかもしれません。 (余談になりますが、これは皆既月食の時に月が赤く見えることと深い関係があります。地球が太陽全体を隠すところまで近づいても、地球の縁の“夕焼け”は見えています。この夕焼けを浴びて赤く見えるのが、皆既月食です。) もしも手前を横切っている惑星に大気がなければ、赤い縁はできません。また、大気の組成によって吸収される光が異なり、“夕焼け”の色が変わります。つまり、惑星が手前を横切るときのわずかな色の変化が、大気の有無と組成を教えてくれるのです。生命が存在できる環境の惑星や、何かの生命体が呼吸をした可能性などをさぐる上での大きなヒントになるでしょう。
ただし、遥か彼方にある小さな惑星の大気を分析するためには、ケプラー以上の精度が必要です。日本などがハワイで建設中のTMT望遠鏡や、NASAが打ち上げる予定の新たな探査機TESSの活躍、そしてトランジット法以外の方法も組み合わせた詳細な観測に期待したいところです。 ケプラーが観測したのは、はくちょう座付近の空の一部。ごく限られた範囲をほんの数年間観測しただけで、何千個という太陽系外惑星が見つかりました。広い宇宙には無数の太陽系外惑星があり、地球によく似た星もきっとどこかにあるでしょう。 そして、もしかして、今この瞬間に。宇宙のどこかにある太陽系外惑星で知的生命体が、私たちの太陽が夜空の彼方に輝く様子を観測しながら、手前を横切る地球の存在に気がついているかも知れません。そんな想像を働かせてみるのもまた、おもしろいものです。 ---------------- 日本科学未来館 科学コミュニケーター 谷明洋(たに・あきひろ) 1980年、静岡県生まれ。少年時代から天体観測と写真撮影が趣味。京都大学大学院農学研究科を修了後、静岡新聞記者を経て現職。