いしわたり淳治が選ぶ今年の洋楽、真っ先に浮かぶ『Beautiful Things』
【&M連載】いしわたり淳治のWORD HUNT
音楽バラエティー番組『EIGHT-JAM』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。この連載ではいしわたりが、歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の6本。 【画像】いしわたり淳治の気になるフレーズ(6枚) 1 “Don’t take”(Benson Boone『Beautiful Things』作詞:Benson Booneほか) 2 “クラシックスタイルアドバイザー” (AIエンジニア 安野貴博) 3 “おにぎり2個食うたらあかんのか!”(ブラックマヨネーズ 吉田敬) 4 “一年の中で一番死亡率が高い日は、その人の誕生日” 5 “税金のように持ってかれる”(さらば青春の光 森田哲矢) 6 “スライサー”
魂が叫ぶコーラス
今年も一年、洋楽のヒットチャートをあれこれ聴いてきたけれど、振り返ったときに真っ先に思い浮かぶのは、Benson Booneの『Beautiful Things』かなと思う。米ビルボードのグローバルチャートで7週連続1位を記録するなど、世界的に大ヒットしたので、タイトルやアーティスト名を知らなくても、曲を聴いたら「ああ、この曲か」と分かる人もかなり多いのではないかと思う。 メロディーと歌詞とアレンジが三位一体となって素敵な歌の世界を作り上げている。特に、恋人に巡り合えたことで日々が幸せだと歌う穏やかなヴァース部分と、それを失いたくないと魂が叫ぶコーラス部分の、歌の静と動の対比が美しい。昂(たかぶ)って熱く歌われるコーラス部分の「please, stay(お願い そばにいて)」「Don’t take(どうか 奪わないで)」のメロディーに、ギターがチョーキングでユニゾンするアレンジも素晴らしい。 個人的には、ヴァース部分の「I thank God everyday / for the girl he sent my way / but I know the things he gives me / he can take away(毎日神様に感謝するんだ 彼女に出会わせてくれたことに でも彼が与えたものは 彼が奪うこともできる)」というフレーズが好きだ。幸せを手にしたことで気づいてしまった心の揺れを、短い言葉で完璧に書き抜いていて、後にコーラスで感情が爆発する伏線になっている。 この歌に限らず、洋楽でも歌詞や対訳を読みながら内容を理解して聴いた方がいいと思う歌がたくさんある。私ごとではあるけれど、先日、再結成したオアシスの曲を和訳させてもらう機会を頂いた。六本木ミュージアムで開催中の『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の展示の一環なのだけれど、YouTubeで『Live Forever』をはじめ数々の名曲のMVが和訳を読みながら見られるようになっているので、もしよかったらぜひ。