加熱式たばこ最大100円値上げも 紙巻との税差解消優先、JTと葉タバコ農家に配慮か
こうした動きに反発しているのが、加熱式たばこで先行する米フィリップモリスインターナショナル(PMI)など海外たばこ大手だ。とりわけ、「アイコス」のブランドで国内加熱式たばこ市場の約7割のシェアを持つPMIにとって、今回の加熱式の増税は「メーカーやユーザーにも大きなインパクトを及ぼす内容」(フィリップモリスジャパン、PMJの小林献一副社長)と頭を抱える。
JTによると、紙巻きたばこ1箱(20本入り)580円のうち、税金が占める割合は61・7%(357・6円)。このうち消費税を除いた国・地方のたばこ税とたばこ特別税を含む「たばこ税」は約305円だ。
一方、葉タバコの含有量が少ない加熱式にかかるたばこ税は約220~270円で、紙巻の7~9割に抑えられている。来年度の税制改正では、この税差を26年度に解消する方針が示される見通しだ。PMJの試算では、この税差解消で、加熱式の価格は1箱当たり54~104円の値上げが想定される。27年度からは2年間かけて1本当たり約2円の増税が見込まれ、さらなる値上げは不可避だ。
紙巻きに比べ健康被害を抑えられる加熱式は、欧州では紙巻きよりも50~60%税率を低く設定している。今回の政府の増税方針はこうした対応とは相反するものの、「同種・同等のものには同様の負担を求める消費課税の基本的考え方」(24年度税制改正大綱)との論理で、紙巻きと加熱式は「同質の嗜好品」として〝ひとくくり〟に考えている。
「たばこ増税というインパクトあることが、多くの人が知らない中で決められるのは、いかがなものか」と小林氏は、政府の税制改正スキームに対しても苦言を呈す。PMJは加熱式の需要が落ちこまないような価格戦略を検討していく方針としている。