【買収・MBO騒動で揺れるセブン-イレブンは北米事業で大幅減益】日本のコンビニの「海外進出」はなぜ苦戦を強いられるのか? 独自の規制と地元企業の台頭でアジア諸国からも続々撤退
海外企業からの買収提案を受けたセブン&アイホールディングスが、防衛策としてMBO(マネジメント・バイアウト)による非公開化を検討していると報じられるなど、コンビニ業界を取り巻く環境は激変の最中にある。その行方次第では、今後のコンビニの勢力図が書き換わる可能性もありそうだ。 【コンビニ三国志・徹底解剖】海外進出にも注力 競争が激化する「アジア出店」3社の工夫
そうした中で、大手3社を含む国内コンビニ各社は、新たな活路を見出そうと海外事業に力を入れているが、苦戦を強いられている現実がある。最近目立ったのは、セブン&アイ・ホールディングスの北米事業。米国とカナダに1万3267店舗を展開している(2024年2月時点)が、2024年3~8月期には米国で続くインフレのあおりで大幅減益。業績不振の店舗を閉鎖し、通期の2025年2月期の海外コンビニ事業の営業利益を前期比31%減に下方修正した。 これが足を引っ張る形で、グループ全体の業績も下方修正を余儀なくされている。『日系コンビニエンス・ストアの国際展開』(文眞堂刊)の著書がある、早稲田大学の川邉信雄名誉教授はこう解説する。 「海外進出の成果が十分に得られていないのは、他のローソン、ファミリーマートの大手2社とも共通です。セブンは2021年5月に約2兆3000億円で買収したガソリンスタンド併設型コンビニ『スピードウェイ』(3800店舗)の貢献度が大きく、一時利益の約半分を占めていました。しかし、その後は米国内でインフレが進み、より低価格を求めるニーズが増大。それを取り込めなかったことが響きました」(以下、「」内のコメントは川邉氏)
各社の主戦場は「アジア」
ローソンの北米系店舗は2012年1月開店のハワイのホテル内の2店舗のみ。ファミリーマートは2005年7月にかつてカリフォルニアを中心に「高級コンビニ」で進出したが、2015年に現地法人を清算し撤退している。近年の各社の進出先は、経済成長のセンターであるアジア・太平洋地域が中心。中国や韓国、台湾、ASEAN諸国などである。言うまでもなく、商品のラインアップは日本国内の店舗とは異なる。 「合弁であれエリアFC契約であれ、店舗の運営会社の多くは現地で食品・生活用品を製造する業者。台湾統一企業、タイのCPグループやサハグループなどがそれに当たります。そもそも彼らは自社製品を販売する目的でコンビニ事業に進出したわけで、そのグループ企業の商品を扱うことが多い」(川邉氏) 現地の人気商品、例えば台湾や中華圏なら漢方茶のような汁にゆで卵を漬けた「チャーエータン」や、おにぎりの「大口飯トァン(トァンは米偏に團)」、 香港セブンの飲茶セット、ベトナムの「バインミー」などを扱っている。川邉氏は、中間層や若者市場が台頭しているこれらの国で「『消費の二重構造』が生まれている」と指摘する。これは米国ほか先進国の生活文化が流入した戦後の日本社会を思い浮かべれば理解しやすいかもしれない。 「1960年代、学生だった私が高級官僚の父親を持つ友人の家に遊びに行くと、まずコーヒーにケーキ、クッキーが、そのあとから日本茶、せんべいが出てきた。元来の和風のライフスタイルの上に、新しく洋風のものが加わったわけです。同様にアジア・太平洋の国々では、現地の伝統的な生活と、欧米日韓を中心とする先進国のライフスタイルという二重の消費のニーズを満たす形でコンビニが発展したと考えられています」
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