人気爆発!“小さな力士”炎鵬はなぜブレイクしたのか?
横綱鶴竜(33、井筒部屋)が、7場所ぶり6度目の優勝を飾った名古屋場所で話題を呼んだのが炎鵬(24、宮城野部屋)の奮闘だった。 土俵入りで起きる歓声、拍手は、人気力士の遠藤、阿炎らを差し置いてナンバー1だった。身長169センチ、幕内最軽量99キロの小さな体で平均体重165キロ前後の巨漢力士に立ち向かう姿は、観客の判官びいきも手伝って、勝っても負けても大歓声。入幕2場所目、西前頭14枚目で迎えた名古屋場所は9勝6敗と堂々たる結果を残し、技能賞を獲得。「まさかいただけるとは」と語り、待望の勝ち越しを決めた14日目には土俵下で涙を見せた。しかもマスクが甘い。観客のハートをくすぐる要素がてんこ盛り。それが炎鵬だ。 アマチュアの世界では有名だった。金沢学院東高3年の2012年、世界ジュニア相撲選手権で優勝、金沢学院大2、3年時には世界選手権の軽量級(85キロ未満)を連覇。アマチュアでタイトル10個を手にしたが、当初は角界入りの意思はなく、一般企業への就職を考えていた。ところが、その相撲センスを見込んだ白鵬がスカウトに乗り出し“内弟子”として入門。横綱の慧眼が、類いまれな小兵力士を世に出したことになる。 17年3月の春場所の前相撲で初土俵を踏み、夏場所は序ノ口で7戦全勝、名古屋場所と秋場所も序二段、三段目で7戦全勝し、優勝決定戦などもクリアして3場所連続各段優勝の快進撃を見せた。幕下に上がった4場所目の1番相撲で三役経験者の常幸龍に初黒星を喫したが、序ノ口デビューからの21連勝は歴代4位タイ。また18年春場所を新十両で迎えるにあたり、初土俵から所要6場所での関取昇進は、幕下付出、三段目付出格入門者(アマチュア横綱など特別な実績を持つ者)を除いて、史上最速タイのスピード出世だった。 炎鵬の強みは「逆転の発想」にある。「体格差をあまり言われたくない。自分にしかできない相撲がある」。角界は力士の大型化が進む一方だが、それは、大相撲が“無差別級”ゆえの必然だ。 格闘技においてサイズと強さは時に比例する。しかし、相撲は「下からの攻め」が定石。貴景勝、遠藤、竜電、明生ら「低く、速い踏み込みの立ち合い」が持ち味の力士が腰高の巨漢力士を破るのは珍しくない。