人気爆発!“小さな力士”炎鵬はなぜブレイクしたのか?
炎鵬は極端な“変則力士”で普通の攻めが常に下からになる。しかも、速く、小回りが利く。当然、顔合わせが増えていけば、慣れられる部分も出てくるのだが、まだ幕内2場所とキャリアが浅い。その強みを生かす反面「例えば出稽古に行って、相撲を取ることがあっても、本場所では違う相撲をとるとか。慣れるのは向こうだけじゃないでしょう?」というクレバーさもある。 攻めのパターンは立ち合いで潜って前褌を引くケース、左に回って左下手でまわしをとり、横から攻めるケースが多いが、時には真っすぐ低く当たる。名古屋場所2日目に背後を取られて送り出しで破れた、身長195センチ、体重204キロの巨漢、魁聖を「前から消えちゃった。あんなの相撲じゃないよ」と嘆かせた。この相撲こそ炎鵬の真骨頂だろう。 少し前まで体重増量に悩んでいた。入門当時は90キロ前後。一時は「まず100キロ。次に110キロ。最終的に115キロになれば」と増量計画を練っていた。だが、米がおいしい北陸地方の石川・金沢出身というのに「白米が苦手。あのもわっとした匂いがダメ」という偏食。なかなか増量できなかった。しかし、今の考え方は違う。 「動きやすい体重でいい」 日頃から白鵬という最高の稽古相手に恵まれ、胸を出してもらう中で「こうすれば」という基準が生まれる。また十両、幕内と経験する中でパワー、スピードと体重の理想形も見つけた。相撲のうまさでは幕内有数の嘉風らに「今のままでいいよ」と助言を受けたことも、自分の感覚に自信を持つことにつながった。 人柄もいい。 「白鵬の内弟子」という特殊な存在だが、支度部屋では御嶽海、阿武咲、阿炎らとひまを見つけては談笑し、交流を深めている。また、父親が北國新聞社勤務だったこともあってか、マスコミ対応は抜群。丁寧な受け答えだけでなく、コメントのおもしろさ、人を選ばないフレンドリーさを持ち、炎鵬を悪く言う記者は誰もいない。 相撲が単純におもしろい。誰からも愛される。炎鵬がこの先恐れることがあるとすれば、故障だけだろう。人気と徐々につけつつある実力をバックにどこまで番付を上げていくか。炎鵬への注目は続く。