「祐希は“戻ってきた”と思わせる活躍ぶりでしたが…」恩師が見た、石川祐希と髙橋藍のパリ五輪。今後の日本バレー界に求められる進化とは?
求められる次への進化は?
――パリ五輪に出場した日本代表は、世代を越えた幅広い人たち、みんなが応援するチームでしたね。 東京五輪に向けたところから始まって、「東京の経験を次に活かそう」とパリへの戦いがスタートした。日本人だけでなく、海外の人たちも魅了するチームでしたね。パリ五輪の会場で(元ポーランド代表で、日本のVリーグのパナソニックパンサーズでもプレーした)ミハウ・クビアク選手も真剣に応援してくれた。 それだけの魅力がある楽しいチームで、切磋琢磨した中で発揮する技術の見せ合い、巧さ、人がハッと思うものが蓄積されていた。東山高の生徒たちも試合を見ながら熱狂していました」 ――高校生たちはどんな反応でしたか? 質問してくるようになりましたね。昔は単純に、プレーの質について聞かれることが多かったのですが、今回はイタリア戦の次の日、練習が終わった後に僕のところに5、6人の選手が来て「イタリア戦の敗因って何ですか?」と聞いてきました。 そこで僕が感じたことを伝えたら、納得して帰る。その姿を見た時に、技術に関してこれがよかった、ここが通用したというのはわかっているから、その先、勝負を分けた部分やゲームの流れが気になるようになったんだなと。それは、技術レベルや発想に関しては高校生もトップレベルに近づいているということですよね。しかも質問してきたのは、試合に出ている選手ではなく、なかなか試合に出られずにいる選手たちだったので、その反応は僕も嬉しかったです」 ――ここから新たな日本代表がスタートし、高校生年代の現場でもさまざまな変化が求められ、その変化や進化がトップカテゴリーにもつながっていくはずです。高校生の指導者として刺激を受けたこと、「こんなことを実践したい」というイメージはありますか? 今の代表チームが高校生のレベルもグッと引き上げてくれたからこそ、次の進化を考えるとSVリーグがどうなるかが大事ですよね。特に僕が期待したいのは、ミドルブロッカー陣の成長です。 オポジットやアウトサイドヒッターは世界的にも有名なトッププレーヤーが来日するので、同じポジションの選手たちは試合に出るため、勝つためには成長しなければならない。同様の流れがミドルブロッカーにも起きてほしいですし、海外で通用するミドルブロッカーになるための挑戦をしてほしい。 あれほどミドルを使うことを得意とする関田が「使いたい」と思いながら使えなかったということは、さらにミドルの成長が必要なんだという裏付けでもあると思っています。 これからは個々のレベルアップももちろんですが、ポジションごとの技術力アップも不可欠。僕も将来を見据えた指導をしていきたいですし、今の高校生にも楽しみな選手がたくさんいますので、どんどん伸ばしていきたいですね。 取材・文/田中夕子
松永理生
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