「ゴアテックス史上最大の革新」ePEとはなにか?
「ものすごくハードルの高い課題だった」
「日本ではまだあまり知られていないんですが、欧米ではフッ素化合物を問題視する気運がすごく高まっていて、すでにアメリカのいくつかの州やEUでは、フッ素化合物を含んだ製品の販売を禁止する法案が2025 年から施行される予定もあるほどなんです。われわれパタゴニアもこうした動きに率先して取り組んでいかなければいけないという意識があったので、ゴアさんに働きかけて開発に協力することになりました」(パタゴニア日本支社・片桐星彦さん)。 開発がスタートしたのは2012年に遡る。当初からパタゴニアを開発パートナーとして、二人三脚で新素材の試行錯誤を進めていたのだという。 「当時、『PFCフリーのメンブレンができないか』というリクエストをパタゴニアさんからいただいたんです。それは正直、われわれにとってはものすごくハードルの高い課題だったんですが、何十もの素材を試して、いっしょに試行錯誤しながら、最終的にePEにたどりついたというわけです」(日本ゴア・大貫英昭さん)。
旧来のゴアテックスウエアと実用面での違いは?
その新しいePE、われわれユーザーレベルで意識すべき違いはあるのだろうか。そこがまず気になるところだ。 「従来のゴアテックス製品とまったく同じ使い方で、同じ性能を期待していただいてかまいません。防水性や透湿性、防風性などは旧来品とまったく変わらないので」(大貫さん)。 大貫さんはそう語る。ゴア社では防水性や耐久性などさまざまな社内基準を設けていて、その厳しさは業界では有名な話なのだが、ePEは旧来のePTFEと同じ基準ですべてのテストをパスしているという。 「じつは、分子レベルの耐久性でいうと、ePTFEのほうが強いんですよ。ですから理論上はePEになると耐久性が劣ることになるんですが、それは40年とか50年というスパンの話なんですね。その前に表地や裏地が寿命を迎えてしまうことがほとんどなので、実質的な耐久性に差はないと考えていただいていいと思います」(大貫さん)。 実用面ではなにも変わるところはない。それが10年かけてたどり着いたePEの性能であるというのだ。 ただしひとつだけ言えるとすれば、PFCフリーの撥水加工やePEは撥油性に劣る部分があるという。つまり、皮脂汚れなどが付着しやすく、そのまま使っていると透湿性などを阻害する。洗濯をすることで皮脂汚れは落ちるので、こまめに洗濯をしてほしいということだ。 「洗濯の重要性は今回のePEにはじまったことではなくて、旧来のゴアテックスウエアでもそうなんです。ですからパタゴニアでも以前からこまめに洗濯してほしいと情報発信してきたんですが、ゴアテックスウエアは洗濯しないほうが長持ちするという伝説がいまだに一部で根強いですよね。そうではないということをより積極的に訴えていきたいです」(片桐さん)。