なぜ植物は病気になるの? うどんこ病もすす病も炭そ病も、原因はたった1つ
一般に私たちは、植物についた病斑や害虫の食害痕を見つけてから病気や害虫の発生を知り、あわてて対処することがほとんどです。でもじつは、病原菌や害虫は、症状や被害が目に見えていないときも存在しているのです。そもそも植物は、なぜ病気になってしまうのでしょうか。『NHK趣味の園芸 12か月栽培ナビDo 病気と害虫を防ぐ』(著・草間祐輔)から紹介します。
もともとガーデニングは病気や害虫が発生しやすい環境
私たちは、毎年予告なく発生する病気や害虫に悩まされます。なぜでしょうか。 その理由として、もともとガーデニングは病気や害虫が発生しやすい環境であることがあります。自然の野山にも植物に被害を及ぼす病原菌や害虫はたくさんいます。でも、それらはさまざまな生物とともに、安定した生態系の中に存在しているため、病気の発生はほとんどありません。害虫も、食物連鎖によって天敵との調和が保たれているかぎり、ほとんど大発生しません。 ところが、私たちが手を加えた庭やベランダなどは、自然に比べると植物やほかの生物の種類が単調なため、生態系のバランスがくずれています。不安定な生態系では病気や害虫を抑えきれません。さらに、日当たりや風通しなどの環境、水やり、施肥なども、不適切な状態だと植物が十分に育たず、病気や害虫が発生してふえる原因になります。そのことを認識して、病気や害虫の予防や対処に取り組みましょう。
病気は症状が出る前から始まっている
植物を刺激して病気を起こす「病原」には、カビ(糸状菌)、細菌、ウイルスなど「伝染する病原」と、暑さや寒さなどの気象、大気汚染、各種養分の過不足、不適切な栽培環境などが要因の「伝染しない病原」があります。ただし、伝染しなくても、それがきっかけで軟弱に育ち、伝染性の病原に侵されることもあります。
原因はカビ。伝染する病気の多くは、カビの胞子の飛散から始まる
伝染する病気の原因の多くはカビです。食品などに生えるカビと同じ仲間で、体は糸状の「菌糸」でできています。そして、栄養や環境が整うと、粉状の「胞子」をつくります。胞子は、植物のタネに相当します。 胞子は風や水滴などによって飛散し、ほかの葉や花に付着します。そこで菌糸を伸ばし、植物体に侵入して栄養を奪います。植物体内で菌糸が増殖すると植物が傷み、病斑が現れます。私たちが病気と気づくのは、やっとこの段階です。その後、病斑部分で胞子ができ、飛散して伝染していきます。