「ゴアテックス史上最大の革新」ePEとはなにか?
じつは軽くしなやかになっている。
「実用面では変わらない」と書いたが、じつはユーザーレベルで体感できる違いもある。それは旧来のゴアテックスファブリクスと比べて、少し軽くしなやかになっていることだ。 「組み合わせる表地や裏地によって変わるので一概にはいえないんですが、単純にメンブレンだけを比較すると、ePEの薄さと質量はePTFEの半分くらいになっています。なので、同じウエアで比較すると違いは感じられると思いますよ」(大貫さん)。 そこでちょうどいい比較対象として、片桐さんがパタゴニアの「トリオレット・ジャケット」を見せてくれた。これは今シーズン(2023秋冬)からePEを採用しているが、それまでは旧来のePTFEを使っていた。メンブレン以外の製品仕様は大きくは変わっていないので、違いがわかりやすい。 「重量はメンズMサイスで510g。旧来モデルは550gなので、40gほどの軽量化になっています。数字的にはわずかに聞こえますが、風合いが大きく変わりました。前のモデルは硬めの着心地だったんですが、ePEになってかなりしなやかになりました」(片桐さん)。 さわってみると確かにしなやかだ。トリオレット・ジャケットというとハードユース向きという印象があったが、このしなやかさなら活用範囲はもっと広がるかもしれない。防風性や耐久性などウエアの性能としては変わらないというのだから、これはePEがもたらすメリットといっていいだろう。 「ここは数字で説明できない感覚的なものなので、実際にさわって感じていただくしかないところなんですが、ePEになることで、ウエアの風合いとしての差は感じられるんじゃないかと思います」(大貫さん)。
2025年までにすべてがゴアテックスePEメンブレンに。
さて、このePE、現状はまだ過渡期にあり、市場にあるすべてのゴアテックスウエアがePEを採用しているわけではない。しかし2025年までには、ePEに切り替わっていく予定だという。 「アメリカでは、REIが2025年以降はPFCフリーでないアパレルは販売しないという決定を出しました。REIはアメリカ最大手のアウトドアチェーン店ですから、すべてのウエアメーカーがPFCフリーに取り組むほかないという状況なんですよ」(片桐さん)。 環境によいものは価格や機能にデメリットを抱えるものも少なくない。しかしそこに一切犠牲を強いずにPFCフリーを実現したePEの登場は、ゴア社の技術力とパタゴニア社の理念あってこそだと感じる。 ユーザーにはわかりにくい変化だが、その裏側で進行していたのは歴史的な大きな進化。今後、そんなところにも注目してみると、ウエア選びが奥深いものになるのではないだろうか。 ********** ▼PEAKS最新号のご購入はAmazonをチェック 。 文◉森山憲一/写真◉宇佐美博之
PEAKS編集部