「ゴアテックス史上最大の革新」ePEとはなにか?
「ゴアテックス史上最大の革新」ePEとはなにか?
ゴアテックスウエアが初めて登場したのは1976年。以来50年近くにわたって、常に改良を重ねながらゴアテックスプロダクトは進化してきた。そしていま、およそ50年の歴史のなかで最大といってもいい革新を迎えている。そのキーワードとなるのは「ePE」という謎の文字列だ。 文◉森山憲一 写真◉宇佐美博之。 冒頭で「ゴアテックス史上最大の革新」と煽ったが、その最新ゴアテックスウエアを着てみても、もしかしたらユーザーは大きな変化を感じないかもしれない。ではなにが革新なのだろうか? まずはそれについて説明しよう。 ゴアテックスはePTFE(Expanded Poly Tetra Fluoro Ethylene=延伸ポリテトラフルオロエチレン)というフッ素化合物の一種を主素材としている。ところが近年、フッ素化合物が環境や人体に悪影響を与えるおそれがあることがわかり、欧米を中心に使用を制限する条約や法律が制定されるようになってきている。 「PFCフリー」という言葉を聞いたことはないだろうか。フッ素化合物を使わない製品をさす用語で、アウトドア界では主に新しい撥水加工の技術を指すときに使われてきた。(PFCフリーについて詳しくは以下の記事を参照)。 だがPFCフリーとは撥水加工だけに関わるものではない。本来は、フッ素化合物を利用するありとあらゆるものが対象になる。フッ素化合物を主素材とするゴアテックスもその例外ではないわけだ。 しかしePTFEは、50年以上にわたって改良を重ねてきた、まさにゴアテックスプロダクトの心臓部。ここを根本的に作り替えることは技術的に非常にハードルが高かった。仮にできたとしても、ゴアテックスならではの性能を維持することはきわめて困難だった。 ゴア社がこの課題に取り組み始めておよそ10年。すべてをクリアする新しいゴアテックスファブリクスがついに誕生した。素材の名は「ePE」(Expanded Poly Ethylene=延伸ポリエチレン)。その名称からわかるように、ePEにフッ素は含まれていない。 さてここで、冒頭に書いた「ユーザーは大きな変化を感じないかもしれない」という一文を思い出してほしい。 新しいePEは、旧来のePTFEと同等の性能を発揮する。だからユーザーは変化を感じない。革新は機能面ではなく、ユーザーには直接関係しない内側で起こっているのだ。 その新しいゴアテックスはどのように開発されたのか。開発に関わってきたパタゴニア社を交えて、裏側を聞いてみた。