ウクライナの命運はバイデンの決断次第、長射程AMRAAMとATACMS供与を
ウクライナ軍が今、地上戦でロシア軍に苦戦しているのはドネツク州正面であり、今後厳しい戦いを強いられる可能性があるのがクルスク正面であろう。 【筆者作成の図】ロシア戦闘機、滑空爆弾による空爆とウクライナの対応イメージ この地上戦において、ウクライナにとって対処が最も困難になっているのがロシアの肉弾戦と戦闘機からの空爆である。 戦闘機から発射される滑空爆弾を使ったウクライナ防御陣地への空爆によって陣地が破壊され、防御ラインに穴が開けられている。 それも、ウクライナの防空範囲の外からの攻撃、つまりアウトレンジからの空爆なのである。 ウクライナは、長射程の空対空ミサイルが欠如しており、ロシアの戦闘機を撃墜できないために、この攻撃を阻止できない状況なのだ。 ロシア機を撃墜できていない実態と影響、撃墜に必要なミサイルと供与すべき時期、ロシア戦闘機の撃墜がウラジーミル・プーチン大統領を停戦交渉に引きずり出す決定打となる可能性があることについて考察する。 ■ 1.ロシア軍の空爆が作戦に応じて逐次増加 ロシア機による空爆回数は、空爆回数の情報が公開された2022年9月から2023年1月頃までは月間約500回であった。 2023年5月からのウクライナの反転攻勢に対処するために、ロシアの空爆回数は月ごとに増加して2000回にまで達した。 2023年10月頃から始まったアウディウカ方面の攻勢を支援するために、空爆回数は一時低下したものの再び急増し2500回に達した。 さらに、2024年5月のハルキウ侵攻支援、同年8月からのウクライナのクルスク侵攻阻止と反撃のため、約2000回の回数を継続している。 これは、当初の4~5倍に増加した状態が続いているということである。 グラフ1 ロシア軍機による空爆回数 ウクライナ参謀部が空爆の回数を公表したのは、2022年9月からであり、それ以前のデータはない。
■ 2.火砲大量損失を空爆増加で賄うロシア軍 ロシア空爆回数の増加は、地上作戦の必要性に応じて実施してきたと考えられるが、このほかにも別の要因がある。 それは、ロシアの火砲(榴弾砲・迫撃砲・多連装砲)の損失が多いことと関係がある。月ごとの火砲の損失数の推移を見ると、空爆の推移とほぼ重なるのである。 ロシア火砲の損失は、侵攻開始からの約1年間は、月平均約200門であった。 その翌年の5月から急増し、月平均800門であり、侵攻開始から1年間の約4倍に増加した。 その後も再び増加し2024年の8月には1600門を超えた。 2024年2月から10月までの月平均が約1200門であり、侵攻後1年間の月平均回数の6倍に達している。 グラフ2 ロシア軍火砲の損失の推移 空爆回数の増加傾向は、火砲の損失の傾向と類似している。 ということは、本来は火砲による砲撃で地上部隊を支援すべきところを、それができなくなり空爆でカバーするようになったということだ。