ハワイがサッカー界の「ラストマーケット」? プロスポーツがない超人気観光地が秘める無限の可能性
2028年のプロチームによる大会復活に向けて機運を盛り上げたい
――コロナ禍を経て、2022年に子ども向けのサッカークリニックという形でリスタートされましたが、どのような雰囲気なのですか? 中村:コロナ禍の期間が意外と長引いて、ちょうどその時にアロハスタジアムが老朽化で建て替えが決まるなど、悪いことが重なってしまいました。ハワイは閉ざされた社会で、時間が空くと積み上げた信用が消えてしまう恐れがあるので、定期的に通って、2022年と2023年はクリニックという形で開催しました。どちらの年もチケットはすぐに売れ切れて300人ぐらいの子どもたちが集まって、盛り上がりました。今年からは子ども向けの大会もスタートしたので、2028年に新しいスタジアムが完成する際には再びプロチームを呼んで大会を開催するための機運を盛り上げていきたいと思っています。 ――サッカー教室では、スペシャルコーチとして元日本代表の山田卓也さんやハワイ出身の元プロサッカー選手などの参加も決まっています。今大会にかける思いや、準備段階で大切にしてきたことを教えてください。 中村:2028年にプロチームを呼んで再び大会を開催するための土台作りとして、弊社のスタッフを育てることも大切にしています。最大の課題は、開催地のハワイで信用を得ることです。それが実現すれば、すごいパワーになりますから。というのも、ハワイは観光地のワイキキから外に一歩出ると、アメリカの州の中でも下から数えたほうが早いほど貧しい地区なんです。ワイキキはキラキラしていてみんな「アロハ」と歓迎してくれますけど、一歩外に出るとガラッと表情が変わりますし、島は土地が限られているので民泊なども禁止しているんです。この大会はワイキキの外にあるエリアでやるので、それがミックスされた感情を感じますし、私は行政や議会の有力者に会って信用を得られるような機会を重ねてきました。 ――やりがいを感じる瞬間は、どんな時ですか? 中村:2018年に大会を復活させた時に、ある女性が私のところに来て「ありがとう」と言われたんです。話を聞いてみたら、2008年の最初の大会の時に、当時10歳ぐらいだった彼女が、人生で初めて生のサッカーの試合を見たそうです。その4年後にまた生で試合を見て、「サッカーを続けよう」というモチベーションになり、大学生の時にはハワイ大学女子サッカー部のキャプテンになったそうです。そういう形で、ハワイでスポーツにアクセスしにくい子どもたちに生で試合を見せることの大切さややりがいを感じましたね。