人口減の集落で挑む地方創生 山林の温室効果ガス削減量の企業販売に名乗り 深層リポート
対象は三瀬、温海地区の山林計100ヘクタールで認証期間は令和6年度から13年度。当初計画で予定するCO2の取扱量は年間180~190トンとなり、企業に売却する。東京証券取引所では1トン当たり5千円程度の取引があるという。
■「全国に展開したい」
三瀬地区で「ひゃくねん森」という杉林を整備してきた林業、加藤周一さん(68)は「伐採だけはなく、必ず植林して森を育てる。ここの森は循環しているんです」。80年以上の歴史がある杉林は見事に間伐され、根元まで光が降り注いでいた。
日本には約2500万ヘクタールの広大な森林があるが、木材需要の低迷や後継者不足などに直面している。森林由来J-クレジットの対象になる森林も10万ヘクタールにとどまっているのが現状で、野村総研の担当者は「この取り組みを全国に展開し、森林由来J-クレジットで地方創生に貢献したい」と今後を見据えた。
■森林由来J-クレジット
適切な森林管理による温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が「クレジット」として認証する制度。CO2などの排出量削減に関わる取り組みをした事業体は、国の認可を受けてその削減量分をクレジットとして企業などに販売できる。クレジットを創出した事業体は売却益で森林整備の効率化などを行うことができ、クレジットを購入した企業は森林保全活動の後押しやCO2削減などをアピールし、製品・サービスの差別化にも活用できる。
■記者の独り言
親族が九州の山奥に山林を所有している。近くには日本一高いとされる杉や、観光バスで見物客がやってくる巨大なヒノキもある。一見、羨(うらや)ましいとも思えるが、実態はまったく違うらしい。「一山、数万円でも売れない。持っているだけ損」。手入れが行き届いていない木材は、「ほとんど価値がない」と聞く。運び出すだけで赤字になり、手が付けられずに結局、山は荒れていく。取材した「森林由来J-クレジット」の取り組みは、森林の再生への福音になるのか。(菊池昭光)