もう故障に泣かされない!プロ・ランニングコーチ提唱の厚底シューズ時代に欠かせない「体幹ランニング」
なぜトラブルが発生するのか
厚底シューズには多くのメリットがありますが、思わぬ落とし穴もあります。それは故障です。 ランニングの推進力の源は、着地時の衝撃。地面はいくら強く踏み込んでも凹みませんから、衝撃が強ければ強いほど大きな地面反力が得られます。それが推進力に変わるのです。 薄底シューズでもそのメカニズムは同じですが、厚底ではソールとカーボンプレートの復元力&反発力が加わるうえに、接地時間が短くなるため、一気に大きな力が加わります。 着地から蹴り出しまでの一連のプロセスをブレなく安定させるための脚筋力や柔軟性が不可欠。これらが不足していると、そのダメージは下半身の骨格に及びます。 若い世代は脚筋力も柔軟性も十分ですから、短い接地時間に集中するダメージをある程度コントロールできるかもしれません(それでも走りすぎるとダメージが溜まり、故障につながるケースも珍しくありません)。 しかし、中高年になると加齢や運動不足などで脚筋力も柔軟性も低下していますから、短めの接地時間で集中的に加わる反発力を上手に制御できなくなり、故障につながる可能性が高くなっているのです。
薄底・厚底で変わる故障部位
薄底時代でも、故障に悩む市民ランナーは大勢いました。その大半は、膝やふくらはぎ、足首や足底のトラブル。 厚底時代、膝や足首に代わって増えてきたのが、股関節や仙腸関節に故障を抱えるランナー。 股関節は骨盤の両脇にある脚の付け根、仙腸関節は骨盤背面にある仙骨と腸骨の関節です。厚底シューズの復元力&反発力を制御するには、膝まわりや足首の筋力のみでは不十分。そこから上の股関節や仙腸関節まわりの筋力が求められるようになってきたからです。 具体的にはお尻、太ももの前後、お腹の筋力です。レース途中のエイドステーションでは、以前はヒートアップした膝下に水をかける選手が大半でした。ところが近年では腰から下に水をかけてクールダウンする選手が目立ちます。厚底時代になり、いかに股関節と仙腸関節が酷使されているかを示している現象でしょう。 いま、ランナーが故障なく快走するためには、トレーニングを厚底仕様にアップデートする必要があります。不可欠なのは、股関節周りの大きな筋肉の強化や仙腸関節のケアです。