なぜ大坂なおみは圧倒的強さを示して2年ぶり2度目の豪州OP優勝を果たせたのか?
「2年前は続けて優勝して地位を確立したかったけど、いまはまったく違う。すごく平和な気持ちというか、このコロナ禍のもとでグランドスラムを戦えることが本当に嬉しい」 従来の1月を2月にずれ込ませた上で大会を開催させた主催者の尽力や、2週間の隔離生活から始まったオーストラリアでの生活をサポートしてくれた、ウィム・フィセッテコーチをはじめとするチームへの感謝の思いが伝わってくる。 彼女の究極の目標は「将来、子供たちの憧れとされる選手」である。 大坂自身が子供の頃から憧れ続けてきた選手が準決勝で下したセリーナ・ウィリアムズ(39、アメリカ)だった。優勝会見であなたが目指すロールモデルとは何か?と聞かれ、大坂はこう答えた。 「以前は、そうならねばならないという強い責任を感じていた。とても、それが怖くてナーバスに感じた。みんながコート上の私に目を向けていると考えていた。試合でラケット叩きつけると“素晴らしいロールモデルではない”と報じられるのではないかと。でも、年を経て、自分にできることはただ私自身であるべきということに気が付いた。小さな子供たちが試合を見に来て、応援してくれる。私は人間としてもまだ成長している。自分に過度にプレッシャーをかけたりはしない。そして子供たちも私と一緒に成長してほしいの」 心の変化がプレーにもポジティブな影響を与え、大坂を現在地にまで成長させたのである。 四大大会の優勝回数「4」は、現役選手のなかでは通算23勝で女子歴代2位のセリーナ、7勝のビーナスのウィリアムズ姉妹に次いで、昨夏に復帰したキム・クライシュテルス(37、ベルギー)とともに3位に並んだ。今後の目標は、3回戦以上に進出できていないクレーコートの全仏オープンとグラスコートのウインブルドンでの優勝である。大坂も「ハード以外のコートでも、心地よくプレーできるようにならないと」と口にする。だが、その先のグランドスラム制覇、通算10勝などの期待を寄せられていることについては、「自分自身にプレッシャーはかけたくない。私がプレーしている相手は世界で最高の選手たち。またグランドスラムを勝てる時が来れば、そうなってくるが、今は自分でできることをコントロールするだけ。懸命に努力してチャンスを得る」と謙虚に答えた。 真夏のオーストラリアで魅せたまぶしい背中に憧れた子どもたちが、若き挑戦者として目の前に現れたときに、大坂の優勝回数はどうなっているのか。崇高な思いを胸中に抱き、大坂が歩んでいく未来を想像するだけで胸がときめいてくる。