新大関・大の里、土俵際逆転で「ヒヤヒヤ」白星発進/九州場所
大相撲九州場所初日(10日、福岡国際センター)9月の秋場所で2度目の優勝を飾り、昭和以降最速となる初土俵から所要9場所で昇進した新大関大の里(24)は、平幕平戸海(24)を逆転の突き落としで下し、大関初白星を挙げた。琴桜(26)は小結正代(33)を突き落とし、豊昇龍(25)も王鵬(24)を寄り切った。一年納めの場所は、3大関そろって白星発進となった。 両足が俵に掛かる。あとがない。腰も伸びた大の里が、新大関の威信をかけた〝火事場の力〟で大関初白星を挙げた。 「今場所もヒヤヒヤした。先場所も(初日は)ヒヤヒヤした相撲だった。初日の入りが課題かなと…」 立ち合いはもろ手突き。両腕が伸びず、過去2勝2敗の平幕平戸海にもろ差しを許した。一気に寄られた土俵際。起死回生の突き落としで逆転勝ちした。 2度目の優勝を飾った9月の秋場所初日も勝ちを拾った。平幕熱海富士に押し込まれ、俵の上に左足一本で残してはたき込み。物言いがついたが、白星発進。そこから11連勝。場所後に昇進した際、初日がポイントだったと明かした。今場所も吉兆としてとらえ、「15日間、一日一番に集中して頑張る」。 10月に行われた秋巡業を「アデノウイルス感染症」で巡業半ばから途中離脱。療養を余儀なくされた。巡業に帯同していた協会関係者によると「発熱もあって次の巡業地に到着すると、すぐに病院を探して点滴を受けながら参加していた」と証言する。秋場所後に昇進した新大関目当てに入場券を購入した地方のファンに応えるため、まさに倒れるまで新大関の責任を果たそうとした。 この日の館内には大の里の父・中村知幸さん(48)の姿があった。巡業を離脱する際、珍しく大の里から連絡があったという。「こんなに熱が出たのは初めてだ」。健康管理への意識が高く、父には子供のころから大会前などに体調を崩した記憶はない。本場所へ向け相撲を取れない息子の不安も感じ取ったが、土俵際の相撲勘は健在だった。 新大関の優勝は平成18年夏場所の白鵬が最後で昭和以降わずか6人。いずれも初日は白星発進。大の里もその道を外さない。(奥村展也)