「プライドが高い日産」に手を焼くホンダの未来が見える…深刻な経営危機に陥った「国内2位メーカー」の根深い問題
■6割を占める北米と中国で販売が不振 現在の日産の開発の視点は、「マーケットイン」ではなく、「プロダクトアウト」に置かれていることから、メーカー側の発想で開発し、作り手としての論理や企画を優先させることに終始して、顧客の意見や視点を重視した企画・開発ができていないというのが実態です。 その結果、顧客が本当に必要とするニーズを優先した製品提供ができておらず、それが、販売台数のおおむね6割を占める主力市場となっている北米や中国での不振を招いているのです。 米調査会社コックス・オートモーティブによると、北米における2024年4~6月期の1台当たりの販売奨励金は、業界平均が約3100ドルであるのに対し、日産は約3500ドルになっています。 この値は、トヨタ自動車(トヨタ)の1460ドルや本田技研工業(ホンダ)の2200ドルと比較してみても、かなり高い水準にあることがわかりますが、値引きの原資となる奨励金をこれだけ費やしてもなお販売が不振なのは、日産の車に消費者が魅力を感じていない証左であると言えます。 また、北米では現在、EV車の需要がシュリンクし、代わりにHV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)の需要が急拡大しています。 トヨタやホンダがその需要を取り込んで販売台数を伸ばしているのに対し、日産はHVやPHVを投入できておらず、機会損失による利益圧迫を招いています。 ■経営判断を遅らせた“プライドの高さ” HVでは、日産には、「e-POWER」という独自のハイブリッドシステムがあります。ただ、このシステムは、エンジンを発電専用に使い、起こした電力でモーターを駆動させて走るという電動パワートレインであり、この方式が北米の消費者に受け入れられてないというのが実態です。 PHVについては、グループ傘下の三菱自動車工業(三菱自工)に、「PHEVシステム」という優れた技術が存在することから、この技術をベースにして、PHVを開発して投入すれば、北米市場の需要を取り込めたわけですが、日産はそうした経営判断をこの4年間してこなかったということになります。 その足枷となったのは、他でもなく「技術の日産」のプライドです。技術の日産というコンテクストに縛られ、世界でも高く評価されている先端技術を多く持っているという自負が、主力の北米市場で三菱自工の技術を使うことを拒むことにつながったという見方もできます。 2023年度の年間販売数と売上高営業利益率により、各社のポジショニングを示すと図1のようになります。この結果から読みとれるのは、高収益を達成できているメーカーは、図1の左右上方に位置する2つのグループだけであるということです。