アメリカで「構造化」するフェイクニュース 国民の分断とメディアへの不信
広がるメディアへの信頼度の差
重要なのは、報道機関に対する信頼度も分極化しているという事実である。2017年9月6日から10日にかけて行ったギャラップの別の調査によると「新聞やテレビ、ラジオなどのメディアを信頼するか」という質問に対して、「とても信頼する」「信頼する」と答えた国民は、2017年の場合、民主党支持者の中では72%だったが、共和党支持者の間では14%にとどまった(全体では41%)。2016年の同様の調査では、メディアを「とても信頼する」「信頼する」と回答した民主党支持者51%、共和党支持者は今年と同じ14%であり、トランプ政権になり、民主党支持者と共和党支持者の間での報道機関に対する信頼度の差が広がっている。 2017年の両者の58ポイントもの差を見ても、共和党支持者の既存のメディアに対する強い反発が見て取れる。各報道機関が「リベラル寄り」であるという見方もできる。共和党支持者のメディア不信の度合いは、未曽有といっていいほど極めて深刻である。この既存のメディア不信こそ、「フェイクニュース」現象を引き起こした元凶でもあると考えられる。 トランプ氏にとってみれば、自分に否定的な報道機関を「フェイク」と呼べば、支持者たちは強く共感するという構図となっている。
「構造化」されたフェイクニュース
ただ、「フェイクニュース」は国民の分断だけの問題ではなく、報道機関側の事情も大きい。 アメリカのテレビ・ラジオの場合、1980年代後半の規制緩和もあり、比較的政治色が目立つ政治情報番組が目立っている。特定のメディアが左右の政治的立場の応援団の役目をしてしまっている点が大きい。情報の真偽を報道機関が検証する動きも出ているが、そもそも報道機関に党派性がある。 各種メディアの中でもケーブル・衛星の24時間ニュースチャンネル(いわゆる「ケーブルニュース」)から政治情報を得る人が最も多いが、保守のFOX NEWSとリベラルのMSNBCでは、例えばオバマケアの評価について正反対のように分かれている。真実であるかどうかより、いかに自分の「顧客」(視聴者)にとって受け入れられやすいかが報道の基準になっているかのようである。 当然、保守派から見ればMSNBCは「フェイク」、リベラルからみればFOX NEWSは「フェイク」となる。こちらで正しいものが向こうでは正しくない。そんな一種のパラレルワールドが存在するかのようである。 そして、異論はあるが、新聞や地上波などを含めると、既存のメディアの多くが「リベラル寄り」であるとされるため、保守派の不満が高まっているという構図である。 また、多チャンネル化やインターネット上の政治情報の多様化で、取材報道する記者の数が圧倒的に足りなくなっている。記者教育が十分でなければ、誤報も生み出しやすくなっている。さらに、ケーブルニュースやインターネットにしろ、瞬時で情報を提供しないといけない時代に入り、その分、情報を確認する時間も少なくなるほか、情報そのものも薄くなりがちだ。 このように「フェイクニュース」を生み出す環境はアメリカでは構造化されている。