「鏡像生命」は「完璧な生物兵器」になる可能性…38人の科学者が研究の中止を訴える(海外)
免疫システムは鏡像細胞を認識できない
アダマラは、免疫学者たちと話したときに「鏡像細胞研究にとっての死刑宣告」を受けたように感じたという。 免疫学者たちは、人間や他の動物、植物にとって、免疫反応の活性化はキラリティに左右されると説明した。つまり、免疫細胞は病原体のタンパク質であれば認識できるが、鏡像異性体のタンパク質は認識できないのだ。 そのため「ミラー病原体は宿主と相互に反応することはない。栄養豊富で温かな宿主の体を、繁殖に適した環境として利用するだけだ」とアダマラは説明した。 鏡像バクテリアが研究室から流出した場合、症状がゆっくりと現われ、治療に時間がかかる感染症を引き起こす可能性がある。それらの症状は、抗生物質では治療できない。抗生物質もまた、キラリティに左右されるからだ。 鏡像バクテリアは、宿主の免疫システムによって排除されることがないため、トウモロコシやヤギ、鳥といった特定の生物へ感染しやすいように特化する必要がない。 「感染する可能性のあるあらゆる生物を病気にする可能性がある」とアダマラは言う。 最悪のシナリオでは、鏡像バクテリアは無制限に増殖し、拡散していく。宿主を支配し、最終的にはそれらを殺してしまう。農作物も破壊し、捕食者も存在しない。それは生態系全体に広がり、自然界を新たな鏡像の世界に置き換えてしまう。
Morgan McFall-Johnsen