伊藤忠、双日、味の素…なぜフィンランドに投資が集まるのか。「SDGsランキング連続1位」の国が持つ可能性
SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー。日本では、特にサーキュラーエコノミー関連の報道は、政府の脱炭素宣言が出た2020年末頃と比べて減っている。 【全画像をみる】伊藤忠、双日、味の素…なぜフィンランドに投資が集まるのか。「SDGsランキング連続1位」の国が持つ可能性 一方でEU諸国ではサーキュラーエコノミーに現在も国と企業が正面から向き合っている。中でもフィンランドは世界SDGsランキングで3年連続1位(2021~2023年)を獲得。 同国の気候・環境大臣やクリーントランジションに取り組む企業へのインタビューから、なぜサーキュラーエコノミー施策を経済政策の中心に置くことができるのかを探る。
伊藤忠が合弁会社をつくる製紙業界のトップ企業
どこまでも続く森、森、森……。ヘルシンキに近づく機内から見る風景に、まず圧倒される。しかも日本で想起する森と違い、山ではなく平らな土地に木が延々と立っている。 フィンランド国土の約7割を森林が占めており、その資源を活かした木材パルプ産業は長く同国の重要な産業だった。メッツァグループはグローバルに展開する業界のリーディングカンパニーの一つで、売上高は61億ユーロ(約9920億円、2023年)。 現在、同グループはバイオ製品事業に注力している。その背景にあるのは紙の需要減少と、国家戦略の「2035年CO2ネット排出量ゼロ」だ。 バイオ製品工場は、首都ヘルシンキ市から300キロメートルほど北の湖水地方にある。2022年に完成したばかりというバイオ工場には、年間5000~6000人が視察や商談に訪れるという。エントランスを入ると、「私たちは木を100%活用します」と刻まれた木のボードが目に飛び込んできた。 この工場で進むのは、製紙用だったパルプを繊維やパッケージ材料などの他の原料に転換するための研究開発。その原料を使った事業の一つに、伊藤忠商事が合弁会社を作り共同展開するブランド「クウラ(Kuura)」がある。 クウラの原料は、製紙用パルプを転換して作られる次世代セルロース繊維。セルロース繊維自体は石油由来でなく、生分解性もあるサステナブルな素材として知られているが、その生産過程での環境負荷が課題とされてきた。 しかし、メッツァグループで研究開発を担うメッツァスプリングのCEO、ニクラス・ウォン・ウェイマルン氏は「私たちは製造過程で有機溶剤を使わず、化石燃料も使用しません」と胸を張る。 セルロース繊維を触ってみると、まるで羽毛のようにふわふわとして柔らかく、軽い。 2020年後半にデモプラントが稼働し、現在は実証段階。今後はオーストリアの企業であるアンドリッツとパートナーシップを結び、本格稼働のための工場設立を予定している。