伊藤忠、双日、味の素…なぜフィンランドに投資が集まるのか。「SDGsランキング連続1位」の国が持つ可能性
なぜ「脱炭素」に本気なのか?
取材前、二つの疑問があった。一つ目は、なぜ経済政策とサーキュラーエコノミー施策が両輪になって進んでいるのか。 それに対して、環境省のサーキュラーエコノミー担当ディレクター、ヤルモ・ムルマン氏は「サーキュラーエコノミーと経済政策は相反するものではない。サーキュラーエコノミーについては全閣僚が同じテーブルで議論しており、財務省から見れば、サーキュラーエコノミーを推進して原料の輸入額が減ることはメリットだ」と話す。 もう一つの疑問は、なぜ企業、研究機関、政府、そしてそこで働く一人ひとりが、CO2排出量ゼロに一丸となって取り組んでいるのか。 それについては、『フィンランド 幸せのメソッド』などの著書があり、今回の取材に同行したフィンランド大使館の堀内都喜子さんの言葉から理解することができた。堀内さんはユヴァスキュラ大学大学院に留学し、現地の企業でも働くなどフィンランドに5年間暮らした経験を持つ。 「フィンランドは福祉が充実している一方、税金も高い。だから自分たちのお金の使われ方に関心があるんです。実際にフィンランド人の友人が住む自治体であった話ですが、ある学校を廃校にすることになって、反対運動が起きました。それに対する行政側の提案は、もし廃校を止めるなら図書館を閉鎖することになる、どうするか?というものだったんです」 限られた資源の中でどう合理的な判断をするか。これを聞いたとき、VTTアリ・ハーリン研究教授のプレゼンの最後の言葉を思い出した。 「私たちには3つの天然資源しかない。森林、良質な水、そして賢明な人材」 人口550万人、資源の少ない国だからこその精神性と、官民学が連携して進めるイノベーション。脱炭素の文脈のみでなく、世界的な原料・素材高騰のなかで、フィンランドのサーキュラーエコノミー施策には学ぶべきところが多いだろう。 (取材協力・フィンランド大使館商務部)
高阪のぞみ