伊藤忠、双日、味の素…なぜフィンランドに投資が集まるのか。「SDGsランキング連続1位」の国が持つ可能性
双日が投資する「ターコイズ水素」のディープテック
グリーンでもなく、ブルーでもない「ターコイズ」。脱炭素で注目される水素は、生成時の環境負荷によってグレー水素、グリーン水素、ブルー水素と区分けがされているが、「ターコイズ水素」の開発が進められていると聞いて、フィンランドの北西部、コッコラ市の工業団地内に拠点を持つスタートアップ、ハイカマイト(Hycamite TCD Technologies Oy)を訪れた。 ターコイズ水素とは、炭化水素を化学処理して水素と固体炭素に変換する手法によって取り出した水素のことで、ハイカマイト創設者兼会長のマッティ・マルカマキ氏は「電気分解によって水素を生産するのと比べて、必要なエネルギーはわずか13%。生成プロセスでもCO2を排出しない」と説明する。 マルカマキ氏とのミーティングに同席したのは、2024年1月より双日からハイカマイトに出向する内古閑隆太郎さん。2023年同社に出資参画した双日は、出資を通してハイカマイト技術の日本国内における独占的実施権を獲得している。 ハイカマイトは2024年9月、欧州最大のメタン分解プラントをオープンしたばかりで、「今後は世界各地に他のメタン分解プラントをいくつか建設する予定」(マッティ・マルカマキ氏)という。
CO2からプロテイン。味の素が着目するフードテック
脱炭素と食糧危機を同時に解決 ──。そんな驚きのスタートアップもある。ヘルシンキ市近郊に本社を構えるソーラーフーズだ。2024年4月に完成したばかりというFactory1は、まるでシリコンバレーのスタートアップのオフィスのよう。高い天井にモノトーンの家具がゆったりと配置され、ゲストをウェルカムドリンクでもてなす。 同社が開発するのはCO2と電気、微生物を使って作るプロテインパウダー「ソレイン」。 ソレインはタンパク質65~70%、食物繊維10~15%、脂肪4~8%、ミネラル4~5%で構成される「完全なタンパク質」だ。 2023年、ソーラーフーズは日本の食品大手味の素グループと戦略的提携を結び、シンガポールでソレインベースの製品を開発・テストマーケティングすることに合意した。 Factory1の1階にはテストキッチンがあり、ゲストに“ソレイン料理”をふるまう。食事前に水溶きのソレインを試したが、無味無臭でこれが料理に変身するのか不安になる。 無味無臭なパウダーも、同社社員であるシェフの手にかかるとチーズやクリームの代替食材となり、違和感なく美味しいクリームリゾットやアイスクリームが出来上がった。 研究開発施設を兼ねたFactory1では、現在1日に500キログラムのソレインを生産でき、これは乳牛300頭分の乳タンパク質に相当するという。 「今はアメリカを始めシンガポールの次のエリアで認可取得を進めることと、安定生産できる体制をつくることが課題。2028年に黒字化を目指しています」(パシ・ヴァイニッカCEO)