イーロン・マスクはなぜトランプに賭けるのか…踏み台?政界進出?それとも利益率でBYDの半分のテスラ生き残りのため?
マスクの目的はまずは電気自動車テスラ延命のため
バイデンとマスクが争った2020年選挙では、マスクはバイデンを応援した。だが、2024年選挙でバイデンの代わりにハリスが候補になったのを境にして、ハリスを見限ってマスクはトランプに乗り換えた。 時期的に見て、この乗り換えと、マスクの連邦予算の大幅削減提案とが重なる。つまり、この提案を手土産にして、彼はトランプに近づいたのだ。そして、もっと重要な点は、この時期に乗り換えを図らざるを得なかった要因として、電気自動車の世界的な市場先取り戦争の激化があることだ。 中国の電気自動車メーカーのBYDが、安い価格でEU市場に殴り込みをかけた。その煽りを受けて、たちまちドイツではフォルクスワーゲン、イタリアではフィアット(現在は米クライスラーと仏プジョーと合併してステランティス)、日本では日産・ホンダ・三菱の3社と立て続けに、いずれも売れ行き不振に見舞われた。 そもそも、トランプは電気自動車ブームの元となった脱炭素政策に反対なのである。バイデンの脱炭素政策に乗ったままでトランプ政権の成立を迎えると、マスクがCEOのテスラも、ちょっとしたボタンの掛け違いで、早い話が、トランプの気候変動対策反対にひっかかって、潰されないまでも、冷遇されないとも限らない。 ちなみに2023年の自己資本利益率(ROE%)では、BYD22.2, テスラ11.2, トヨタ11.0, ベンツ10.3, ステランティス9.2, ホンダ7.6, フォルクスワーゲン6.3だ。資本と利益の比率が、テスラはBYDの半分なのだ。そもそも現段階で、先は明るくない。今やリスク大なのだ。 トランプが政権にある4年間を何とか生き延びて、その間に得意の宇宙通信と繋げ、立ち上げを急ぐAIへの進出ともからめて、電気自動車の自動運転に活路を見出そうという戦略を採らねば、あっという間に潰されてしまうかもしれない。テスラはマスクのビジネスの利潤の20~25%を占める。それがゼロになれば、マスクのカリスマ性は雲散霧消ではないか。 実は、マスクの腹の底では、トランプは踏み台に過ぎない。トランプを操れると思っていることが節々に見え見えだ。でなければ、トランプ応援と称して、舞台の上で飛んだり跳ねたりしないだろう。要するに、マスクはトランプに取り入って、貸しを作って、テスラを何とか生き残りさせたいのだ。 トランプ政権で、予算に口出しできれば、交通対策や環境対策にも影響力を及ぼすことができる。それだからマスクは、予算大幅削減をトランプに耳打ちしたのだろう。 これは単なる陰謀説ではない。というのは、そうした戦略を練る体制がマスクを取り囲んでいる。最近になって、ニューヨーク・タイムス(2024年12月23日)によって、それが明るみに出てきたのだ。記事の狙いも、そのあたりと見て間違いない。