オバマ元大統領やイーロン・マスク氏も体験した!? : “作品に身体ごと没入”するアートミュージアム 「チームラボプラネッツ」の美しき世界
東大の友人らと結成したチームラボ
猪子さんは、東京大学工学部を卒業する間際の2001年、大学の友人や幼なじみ数人でチームラボを結成する。WEB制作やアプリ開発などITソリューションビジネスを手がけるかたわら、アーティストやプログラマー、エンジニアなどの集団で、デジタル技術を用いて作品をつくり始める。 制作では、表現を模索し、やがて“鑑賞者の身体がある世界と、鑑賞者が見ている作品との間に境界ができない作品”を生み出すことに成功する。 その作品を、知人の紹介でオフィスを訪れた現代美術家の村上隆さんが見て、世界で発表すべきだと助言。2011年には、村上さんが主宰する台湾の「カイカイキキギャラリー」で初個展を開催し、それをきかっけに、作品は瞬く間に世界へと広がっていく。 チームラボのメンバーで、作品や世界観について伝える工藤岳さんはこう語る。 「虹が見えた瞬間など、自然や何かと自分が連続していると感じたときに、人は美しいと思うものではないでしょうか。あるがままの世界に一体化できたときに初めて、世界を美しい、愛おしいと感じるものだと思うので、チームラボはその“境界のない世界”を表現しています」 猪子さんはじめチームラボは、“強い個”として認識されているものも、些細なものの連続、集合の中で偶然生かされていて、そのこと自体を美しいとしている。その固有の価値観をアートで表現しているのだ。
表現したいのはたった一つ
これまでに国内外で展示された作品は数知れず、現在は大型常設展を、東京では「チームラボプラネッツ」と、2月にお台場から麻布台ヒルズへ移転オープンしたばかりの「チームラボボーダレス」の2カ所、そのほか大阪、マカオ、北京、シンガポール、サウジアラビアのジッダなどで開館中だ。 また、5月には3大メガギャラリー「ペース(Pace)」のニューヨークのスペースで個展が開かれ、さらにアブダビで延床面積1万7000平方メートルの大規模なミュージアム「teamLab Phenomena Abu Dhabi」の年内竣工が決まっている。 そんななか作品は、初個展で発表した【生命は生命の力で生きている】のようなモニターを使った2次元の作品から、大型常設展の多くを占める3次元の空間作品へと展開を見せている。コンセプトについても、身体と作品との境界、作品と作品の境界、人と人との関係性、時間の連続性などいくつにも枝分かれし、その進化は止まらない。 けれども、と工藤さんは言う。 「チームラボが生み出すものは、根本的にはずっと変わっていません。私たちが美しいと信じる“境界のない世界”をただつくり続けるだけです。ここ『チームラボプラネッツ』では、作品を体感してもらうことで感情を揺さぶり、鑑賞者それぞれの感性に強く訴えかけたいと思っています。ぜひ実際に訪れて、体験してみてください」 チームラボは、自身が追求する美の世界をどう築き上げていくのか。これからも目が離せない。 取材・文:杉原由花、POWER NEWS編集部 写真:横関一浩