ウクライナに侵攻したロシアへの制裁、結局は中国・インドが漁夫の利を得た 崩壊しなかったロシア経済、なぜ制裁は抜け道だらけとなったのか
ロシアのウクライナ侵攻から1年8カ月となるが、日本や欧米諸国が科した対ロシア制裁が期待された効果を上げていないことが明らかになってきた。制裁に参加していない中国など第三国が逆に漁夫の利を得ている構図も浮かび上がる。どこに抜け道があったのか。(共同通信=太田清) ▽崩壊起こらず 侵攻後に欧米の制裁を受け、ロシア経済は崩壊するとの見通しは多くが外れた。 世界銀行は2022年4月、同年のロシアの国内総生産(GDP)は制裁などの効果により11・2%減となると予想。フランスのルメール経済・財務相は昨年3月1日、「ロシア経済を崩壊させる」と強調したが、実際はロシアのGDPは2・1%減と予測を大幅に上回った。 今年はプラス成長が確実視される。昨年10月に23年のロシアの実質成長率を2・3%減としていた国際通貨基金(IMF)は、今年1月には0・3%増とプラス成長予想に変更。4月0・7%増、7月1・5%、10月2・2%と期を追うごとに予想値は上昇。
ロシアのシルアノフ財務相は8月、今年の成長率は2・5%以上になるとの見通しを明らかにした。世界銀行による23年の世界全体の成長率2・1%と比べても「好調」と言って良い数字だ。IMFは24年のロシア経済についても1・1%増とプラス予想をしている。 戦争に伴う大量の兵器生産が特需を生んでいるのに加え、年金や最低賃金引き上げなどの景気刺激策も寄与。主要輸出品の原油収入も大きな減少を見せていない。 ロシア経済のアキレス腱であるインフレについてはいったん落ち着いたものの今年7月以降、再び上昇。今年のインフレ率予想は6~7%と高く、ロシア中央銀行は利上げにより抑制する構え。ルーブル安に加え、制裁による輸入物資不足が国内の旺盛な消費需要を満たしていないとの指摘もあり、懸念材料となっている。 ▽追い風 国際エネルギー機関(IEA)のデータなどを元に、ロシア産原油禁輸などの制裁効果などを発表しているウクライナのシンクタンク、KSE(キーウ経済大学)研究所は9月のリポートで、ロシアは欧米、日本などが科した石油に対する制裁を巧みに回避していると報告した。