ウクライナに侵攻したロシアへの制裁、結局は中国・インドが漁夫の利を得た 崩壊しなかったロシア経済、なぜ制裁は抜け道だらけとなったのか
リポートによると、ロシアは侵攻以降、制裁を科した欧米から中国、インド、トルコなどに原油輸出先を振り返ることに成功。ロシア産原油と石油製品の最大の輸出先だった欧州連合(EU)加盟国が、22年2月の410万バレル(日量、以下同)から23年8月に60万バレルまで輸入を急減させた一方、インドは同期間に、10万バレルから190万バレルと輸入を急拡大。中国も輸入量を増やし、ロシアにとり最大の石油輸出先となった。 価格については、侵攻後、ロシア産原油は需要が減少、さらに第三国への輸出先振り替えの際、原油価格の値引きも行われたが、その減少幅も縮小している。 ロシア産ウラル原油は侵攻前は欧州北海ブレンド原油とほぼ同じ価格だったが、侵攻後に価格差が拡大。23年1月には1バレル40ドルも安くなったものの、その後は価格差は縮小し、8月には15ドルの差となった。それだけ、値引き幅が減ったとみられる。輸出先振り替えが順調に進んだことに加え、ロシアを含む石油輸出国機構(OPEC)プラスの減産を受け、世界的に原油需給がタイトになったことが影響したもようだ。
石油輸出収入の面でもロシアに追い風が吹いている。23年2月に123億ドルまで減少した輸出収入は8月に171億ドルまで回復。侵攻前の21年平均を上回った。 石油関連歳入の回復に加え、事実上の輸出増税も実施しており、ロシアの財政赤字は政府目標(GDP比2%以内)を通年で大きく超えることはないとの見方が強まっている。 ▽幽霊船団 第三国によるロシア産石油輸入を食い止めようと、先進7カ国(G7)とEU、オーストラリアは22年12月、ロシア産原油取引価格上限措置(1バレル=60ドル)を導入したが、ロシアは同措置を回避する策を講じ対抗した。 同措置は上限価格を上回る原油の海上輸送に対し保険や融資を認めないという内容だが、KSE研究所によると、ロシアは欧米の保険会社の保険に入らないまま、老朽化したタンカーをかき集め自前の保険だけで原油輸送を行っている。 今年8月時点で、こうしたタンカーの数は156隻に上り、日量210万バレルの原油を輸出している。非正規であるため「影の船団」「幽霊船団」と呼ばれており、必要なメンテナンスを受けておらず、十分な保険にも加入していないため、原油流出時の回収コストや補償を負担できないとの懸念が強い。