干された社内の改革派...国鉄分割に反対した日本政界の権力者・田中角栄の「隠された」真意
安倍元首相が国士と賞賛した葛西敬之が死の床についた。政界と密接に関わり、国鉄の民営化や晩年ではリニア事業の推進に心血を注ぎ、日本のインフラに貢献してきた。また、安倍を初めとする政治家たちと親交を深め、10年以上も中心となって日本を「事実上」動かしてきた。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では、類まれなる愛国者であった葛西敬之の生涯を振り返り、日本を裏で操ってきたフィクサーの知られざる素顔を『国商』(森功著)から一部抜粋して紹介する。 『国商』連載第14回 『日本の実権を握り続けた田中角栄の黒すぎる「本性」とその裏にいた衝撃の「人物」』より続く
本社に集結した三人組
鈴木、中曽根という二つの内閣を通じて分割論を唱え続けてきたのは、第二臨調の亀井正夫や加藤寛たちだ。その提言を受け、さしもの国鉄経営陣も動かざるをえなかった。国鉄の経営再建を検討すると称し、若手職員が本社の経営計画室や職員局に地方から招集された。その中心メンバーが葛西たち、国鉄改革三人組だった。ただし本社に集結した三人組もまた、ただちに分割民営化に向けて突っ走っていったわけではない。 三人組のうち、井手と葛西は国鉄経営計画室に着任した。井手が経営計画室の筆頭主幹、葛西もまた1981年4月11日付で仙台鉄道局の総務部長から本社の経営計画室へ移った。葛西は経営計画室計画主幹と総裁室調査役という肩書を与えられた。もっとも当初の葛西の任務は第二臨調の答申や議論を国鉄本社に伝える連絡係にすぎず、閑職に近い。 また残る松田は、九州の門司鉄道管理局の営業部長や総務部長を経て4年ぶりに職員局調査役というポストで本社に復帰した。北海道大法学部卒の松田は国鉄キャリア官僚に違いないが、経理局で国鉄の予算編成に携わってきた東大卒の井手や葛西に対し、職員局で労使問題に対処してきた現場の苦労人でもある。 そしてこのとき経営計画室筆頭主幹として井手がまとめた「『後のない改善計画』の進行を見守る」という答申が、その後の国鉄改革のたたき台となる。それまで42万人いた国鉄職員を35万人へ、7万の人員削減に取り組む計画だ。計画を作成した井手は、リストラの現場でこれに賛同した職員局の松田と肝胆相照らす間柄となる。