ウクライナに侵攻したロシアへの制裁、結局は中国・インドが漁夫の利を得た 崩壊しなかったロシア経済、なぜ制裁は抜け道だらけとなったのか
ロシアや関係国はこのほか、取引価格について虚偽の申告をして原油輸送を行う手段も使っているとされる。欧米各国のチェック態勢が不十分であることから、見過ごされてしまうケースが数多くあるという。 ▽並行輸入 ロシア経済やその戦闘能力を弱体化させるため、欧米各国は兵器転用可能な電子部品や半導体など多くの物品をロシアへの禁輸対象としているが、制裁に参加していない国からの輸出や迂回輸出が問題となっている。 端的な例が民間航空機部品だ。ロシアの民間旅客機の9割超が米ボーイングか欧州エアバス社製だが、両社は制裁措置を順守し機体はもちろんのこと、保守・修理などに必要な航空機部品を一切提供していない。 侵攻開始当初は、既にある機体を分解して部品を流用することが想定され、ロシア政府も30%ほどの機体を解体すれば25年まで運航可能と主張。その後はロシア民間機運航が困難になると予測されていたが、実際は第三国からの並行輸入で必要な部品を手当している。
ラトビアを拠点としロシアに関する調査報道を手がける独立系メディア「バージヌイエ・イストリイ(重要な話題)」によると、ロシアは昨年3月から今年3月にかけて、ボーイングとエアバスの部品180億ルーブル(約270億円)分を並行輸入したことが税関資料から裏付けられた。購入先企業所在地は上から順にアラブ首長国連邦(UAE)、中国、トルコの順だった。 「重要な話題」が調査したモスクワに本社のあるプロテクトル社のケースでは、同社は侵攻が始まった22年、ロシア航空会社への転売のためUAEの企業からボーイング社製部品を輸入、収益を前年比200倍増加させた。 こうした輸入に関与した企業や経営者は当然、制裁や刑事罰の対象となる。しかし、反汚職運動を続ける非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナル・ロシアのイリヤ・シュマノフ事務局長は「重要な話題」に対し「サプライチェーン(供給網)を下れば下るほど、制裁が守られる可能性は低くなる。刑事罰が科せられるケースはとても少なく、(制裁の危険を察知すれば)すぐ会社を閉鎖し、別の会社を立ち上げればいいだけだ」と指摘する。