中国が迫る尖閣諸島 日中衝突はあるのか?元陸将と台湾の研究者が語る懸念
公船同士の衝突の可能性
「今後、日本の民間漁船が周辺海域に行く場合、海上保安庁の船が守れるか。守りきれないのなら、現状変更はさらに進行するでしょう」 「ただし、中国が目標とする『日中共同管理』は、そう簡単にはいかない。なぜなら海警法施行による日本側の反発が、中国の予想以上だったからです。3月、中国は日本政府に対して、海警局の艦船が尖閣周辺で活動する際、海上保安庁の巡視船や日本漁船に対して武器の使用や強制退去を『自制している』と伝えました。これは日本での反発が強かったことの裏返しです」 「今後ですが、公船同士の衝突が起こる可能性は低いと私は見ています。しかし、仮に衝突が起きると、事は重大です。その場合は外交交渉になり、中国側はここぞとばかりに正式に『共同管理』を提示して日本側に認めさせようとするでしょう。そこで日本が『共同管理』を受け入れるかどうか。それが焦点となると思います」 日米同盟やクアッドなど、国際的な枠組みで尖閣の防衛を図ることは重要だ。一方で、山下氏が指摘するように「中国政府の暴走」を促す危険性も考慮した対応策を講じるべきだろう。また、林氏が指摘するように、中国側の意図を正確に捉え、落とし所を模索する動きも必要になるかもしれない。今後の日本政府の対応を注視したい。 --- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農 学部卒、同大学院農学院修了。 森健(もり・けん) ジャーナリスト。1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、総合誌の専属記者などを経て独立。『「つなみ」の子どもたち』で2012年に第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『小倉昌男 祈りと経営』で2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞、2017年に第48回大宅壮一ノンフィクション賞、ビジネス書大賞2017審査員特別賞受賞。