「セクシー田中さん」の報告書に決定的に欠けている“問題の本質”
これで解決となるのでしょうか。大きな問題があります。そもそもテレビドラマの制作費は年々削られているのです。 上からは少ない予算で作れと言われて、その一方でコアメンバーに9カ月働けという日テレ報告書の改善案は働き方改革的には矛盾です。少ない予算でドラマをつくるためには期間を短くしなければ人件費が製作費の主要な部分を占める映像ビジネスでは予算内にはまとまりません。 ■③ ビジネス視点から紐解く このビジネスという3つめの視点により、問題はまったく違ったものに見えてきます。
そもそも漫画をドラマ化するというビジネスでは誰が儲かるのでしょうか? 一義的には出版社が一番大きな利益を得ます。今、漫画のビジネスはIP(Intellectual Property)ビジネスと言われています。漫画の世界では集英社と講談社がこのIPビジネス化で大きく成功していて、長期凋落傾向の出版物ビジネスを大幅に補う形で、IPによる利益が業績を上向けています。 ドラマ自体は3カ月、つまり1クールでおしまいですが、そこからスピンオフドラマを企画したり、時期を改めてアニメ化したり、漫画が終了した後で独自ストーリーの映画を企画したりということを繰り返すたびに、漫画のIPとしての価値は上がっていきます。結果、漫画の販売部数が増えるのに加えて、関連本、グッズなど出版社にとってのビジネスの幅も広がります。
映像化のメリットは漫画の権利を持つ側にとっては非常に大きなものがあります。手塚治虫先生を例にとるとわかりやすいのですが、あれだけの名作を抱える中で、IPとしての価値が高い作品は『ブラックジャック』『火の鳥』『鉄腕アトム』の3作品だけです。『鉄腕アトム』はIPとしての価値はかなり下がったかと思っていたらNetflixで『プルートゥ』がアニメ化され、またIP価値が一段と上がりました。 ■テレビ局にとってのドラマ化の意味