「セクシー田中さん」の報告書に決定的に欠けている“問題の本質”
相手が会議ではなく脚本家だと見誤った原作者の要求で、最終的に脚本家は第9話と最終話について降板します。 そのことは脚本家にとっては青天の霹靂のような業務命令になったわけですが、ここでどうしても譲れない大きな問題が発生します。クレジット問題です。 ■脚本家のクレジットをめぐる対立 小学館側の要求では、第9話と最終話の番組クレジットから脚本家の名前を外せというのです。この件についても小学館と日テレの間で何度も交渉があったのですが、最終的に第9話のクレジットからは脚本家は外され、最終話のクレジットでは脚本家のクレジットは「脚本(1~8話)」として表記されます。
小学館の報告書では「本件ドラマの第9話、第10話の脚本を書いたのは原作者」ということから「原作者が単独のクレジット表記を求めることはおかしなことではない」と結論づけていますが、ここには問題があります。 映像作品に参加をしたスタッフはその存在をクレジットで明記してもらう根源的な権利があるのです。実際に9話以降のドラマについても降板までは会議に参加してきたうえに、ドラマの世界観は脚本家もコアメンバーのひとりとして一緒に作り上げてきたわけです。
本打ちに参加している他のコアメンバーはクレジットから外されず、立場の弱い脚本家だけ「存在がなかったことになる」のは、脚本家業界全体の利益を考えても抵抗すべきところです。そこで「脚本」ではなく「監修」ないしは「協力」のクレジットで名前を残す方向で交渉が続きます。 しかしクレジットから脚本家の名前を消さないと本編放送や二次利用の許諾をしないという小学館の圧力に最終的に日テレが折れて、第9話のクレジットから脚本家の名前は消えてしまいます。脚本家からみれば実に理不尽な決定が下され、これが後のSNS投稿へとつながります。
さて、ここまでの調査結果から双方の報告書では「再発の防止」という建設的な議論が繰り広げられます。要点としては原作者サイドとドラマ制作者サイドが伝言ゲームではないやり方でコンセンサスを得られるような脚本プロセスが必要であり、かつ納得のいく脚本が仕上がってからドラマの撮影に入るべきだというのです。 そのために双方の報告書が提言していることはコミュニケーションの改善と契約の明確化であり、加えて日テレの報告書は企画から放送までの期間が6カ月というのは短すぎるという改善案です。もっと余裕をもったスケジュールにすべきだというわけです。